欽ちゃん!2006 

萩本欽一さんの、おもしろ魂。
最新の記事 2006/05/11
06 お客さんとの会話

萩本 野球選手も、なるべくなら
「会話をする仕事」
を、してもらいたいんです。

言葉がおもしろくないのは……よくない。

お客さんって、
活字でおどるでしょう。
たのしみにしているんですよね。
野球選手と、
マイクをとおして会話ができるんだから。
糸井 萩本さんは、
テレビでも、アドリブの仕事を
何年もやっていたわけでしょう?
萩本 コント55号のときは
テレビでも、8割がたは、アドリブですよ。

アドリブは、
まちがいもあるんです。
100%正しいわけじゃない……
どれだけ、それを切らずに許せるか、です。
糸井 つまり、
客席とケンカをしていたら
ダメだ、ってことですよね。
なかよくしていないと
アドリブが許されなくなりますから。
萩本 うん。
お客さんは、味方になってもらわないと。

ぼくが、
野球でプロに負けてない、
と思っているところは、試合が終わっても、
誰ひとり、席を立たないっていうこと。

ここでは、絶対、負けない。

これはうちはプロだと思っていますね。
「アンコール!」
野球が終わったあとに、
そう言ってくれたお客さんのアドリブも、
うれしいですよね。

試合が終わって、
「はい、さようなら」じゃないんですよね。
ぼくは、ここからだって思うし、
お客さんも、なにかを待っているもん。

規則をアドリブがぶちぬくというか、
まちがえて、
終わりなのに終わりにしないことで
「……しめた!」と思うのが、
アドリブに対応できる人ですよね。

だから、
失敗したというときも
「……しめた! ラッキー!」
そう思えないと、まずいんです。

「試合を終了させていただきます」
「やだもん!」

終わりの放送に
「やだもん」ってマイクで言うのは、
お客さんっぽくて、イイよね。
終わりじゃないほうが、
お客さんがもうかるんだから。
それが、サービスだもん。

変わるのをめんどくさがらなければ
できちゃうはずなのに、
なんか、ひとつのカタチができると、
そのままやるほうが、ラクになるという……
つまり、
「ラクしたい」が、つまんないのかもね。
糸井 そうですよね。
「おなじところで
 ギャグを言いますから
 かならず笑ってくださいねぇ」
と言われても、つまんないもん。
萩本 うん。
もっと、アドリブが要るんだね。
世の中、つまんなくなってきたのは、
アドリブがないからで。
糸井 読めることばかりを
みんなが求めあっていて、
安心したいってことですよね。
萩本 そう、安心したいみたいなの。

でもね、安心したってつまんない。
つまり、安心すると……
生活がつまんなくなるんじゃないかなぁ。

学校とか、国会とか、
カタチがあるものは、
ついついラクしちゃうけど、
言葉を変えたら、バカウケするよね。

変えれば、お客さんがよろこぶ。
それはわかっているから、
野球でも、どんどん先にいけると思う。

遊び半分ぐらいでやっているのが、
ちょうど、手ごろでね。

監督としては
「筋書どおり!」
という試合が理想だろうけど、
見るほうにとったら、
そんなの、つまんないですよ。

ねえ?
糸井 はい。
「負けても
 チームを好きになれた試合」
を、どれだけ見るか、ですよねぇ。
萩本 はい。
テレビでも、
9時台の番組を痛めつけない、とかね。
ゴールデンの放送のときは、
9時まで、放送時間2時間以内で、
きっちり、おさまらせるの。
どうしても終わらないなら、切らないと。

それに近いことを
やったことがあるんです。

夜、さむくなってきた。
それなのに、
ランナーは、リードしている。
牽制される。

「おい、リードするなよ!」
「ポンポン、投げろ!」

お客さんがさむいんだから、
そういうときは、
はやく終えてあげなくちゃ。

ピッチャーも、
ピヤッ、ピヤッと投げて、
チャカチャカ、終わらして……
モタモタしていたら、場内放送で、
「あと15分しかありません。
 はやく、おさめてください」
と言ったっていい。

お客さんによろこんでもらえるかどうかが
大事なんだから。



(次回に、つづきます)
 
感想は、こちらに もどる 友だちに知らせる
©2005 HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN All rights reserved.