欽ちゃん!2006 

萩本欽一さんの、おもしろ魂。
最新の記事 2006/05/12
07 運をまとめるには

萩本 4対0で負けてる時、
コーチにきいたことがあるの。

「今日は、どう?」
「こまった。
 今日のピッチャーは打てない」
「点、はいんないの?」
「はいんない。
 うーん……負けたかな」
「それじゃ、
 いよいよ、おまじないだ!
 運は、ひっくりかえせるんだから」

運を変える時、
まず、睡眠を考えるんだよね。
「あ、だめだ、ぼくの運は使えない」

その日は、寝てなかった。
だから、
仁平というピッチャーの運を
もらうことにしたんです。

勝てたら、明日、そいつが投げる。
負けたら、投げられないわけ。

「仁平、おまえ、
 選手に、全員、声かけろ。
 『明日、投げさせてください』
 って、声、かけてみろよ」
糸井 おぉー。
萩本 「あ、いけねぇ。
 オレたちが打たなきゃ、
 こいつ、明日、投げられないや」
と、選手たちが思ったら、
ひっくりかえすから。

「○○さーん!
 明日、
 投げさせてくださーい!」

打席に立つヤツに、声をかけさせる。
次の日に投げたいヤツには、運があるから。
そしたら、
声をかけられたヤツらが、ニコッと笑うわけ。

そしたら5連打だったの。

打つたびに、
「信じられねぇ! うぉー、すげぇ!」
と、まず仁平が、
ブワーッと泣きだしちゃって。
明日、投げたいヤツで、
しかも年齢的にいちばんペーペーのヤツが、
「おねがいします! おねがいします!」
と、真剣なんだもんね。

その姿を見た選手たちも、
「なんか、すごいことが起きてるみたい」
「すごいよ!」
と感動して、5連打。
同点になっちゃったの。

だから、
あぁ、やっぱり、運があれば打てるんだ、
と思った。

野球見てると、
ヒットというのは
5割ぐらい運だっていう気がします。
運を、ちょっと変えたら打つんだもん。
糸井 萩本さんご本人に
運の持ちあわせがない時、
といういうのがあるんですね。
萩本 あります。

自分の運っていうのも、
これが、使える時と
使えない時があるんですよね。
寝てない時って、運、ダメなんです。
糸井 確かに、
寝てないと、あんまり
全体が見えないですよね。
萩本 ぼーっとしてるからね。
「俺だめだ、寝てねえや、仁平だ」と。
糸井 そんなベンチにいたら、
おもしろいだろうなぁ。
萩本 野球は芸能界とおなじで、
運をまとめるっていうのは、
そんなにたいへんじゃないな、
というのが、正直な気持ちなの。

ほんとに
自信のなさそうに打っているヤツが、
「仁平、心配すんな」なんて言うのよ。

ドラマみたいに、
生意気なセリフを言いやがる。
こいつ、いきそうだな……
あ、やっぱりヒットだ!
その変化は、おもしろいよ。
糸井 自分のためにやっていることは、
ドツボにハマりやすいですよね。
誰かの助けにいくだとかいう時は、
力、出せちゃうんだよなぁ。
萩本 そうそう。
そういうことが起こるから、
こいつら、みんな、
スターなんだと考えて
運をまとめてやればいいと思うの。

つまり、スターって、
見られてかがやくんです。

社会人野球で
スターが出にくいとしたら、
それはなぜかというと……
だれも見ていないところで
やっているのね。

でも、
かがやきかたのわからないヤツが、
急にプロでかがやけって言ったって、
それは、たいへんですよ。
だから、キラキラッとした人がいない。

昔、
大学とか都市対抗で
見られていた時代には、
見られることでかがやいていたんだもの。
糸井 そうだよなぁ……。
萩本さんが、監督として、
ふつうに秀才になっちゃったら
つまらないので、その感覚のまま、
いってほしいなと思います。
萩本 あやしいままがいいよね。
でも、
そういう人がいなければ変わんないよ。

ぼくなんて、
野球やってるの、ギャグですから。

勝ち負けじゃないものを
作ろうとして、はじめたんだもん。

「ベンチに、マイク、いれてくれる?」
そっちのほうが、
大事なんだとか言えるのは、
ヨソモノだからだよね。



(次回に、つづきます)
 
感想は、こちらに もどる 友だちに知らせる
©2005 HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN All rights reserved.