萩本 |
「野球をとおして地域が活性化する」
「商店街のみんなの利益があがった」とか、
それをプロデュースする人が出てきたり、
そういうのも、ほしいなぁと思ったんです。
だから、
ゴールデンゴールズのマークも、
球団は、大抵、権利があるはずだけど、
おためしで、どんどん使ってもらったの。
地元の佃煮にも、
ゴールデンゴールズのパンダが貼ってある。
「これ、貼ってあるねー」
「はい、作りました!」
「あ、もちろん、いいのいいの。
いいんだけどもね、ほんとうだと、
お金をいただいたりするんだよね。
そうじゃないと、マークやチームを
作った人たちにもうしわけないから……。
でも、今は、使っていいのよ。
そのかわり、
うんと、もうけてもらって、もうけたら、
その時は、ちょっと、ちょうだいね!」
まぁ、どんぶり勘定ですね。
「みんなでたのしく
そういうもので商売してみなよ」
って、思うんです。
ほんとを言うと、
チームの名前やマークを考えてくれた
糸井さんたちには
利益がいかないから
こまってしまうんですけれども。 |
糸井 |
その意図については、
あらかじめ
萩本さんからきいていて、
「この場合には、そうだ」
と、ぼくは納得していますからね。
萩本さんのチームの速度は、
やっぱり、
「そういうことを
いいかげんにしてるからできること」
だと思います。
でたらめじゃないことも、大事だけど、
はじめに、いいかげんなものがないと
まずは、走れないですからね。
たとえば、野球って言葉には
権利なんかないですし。
あの訳語は
正岡子規が考えたらしいけど、
あれで正岡子規が
「オレの許可が必要だ!」
って言ったら、
流行りようがないですもんね。 |
萩本 |
そうだよねぇ。
ベースとボールじゃなくて
「野」を入れたのはスゴイもんなぁ。 |
糸井 |
すごいヘンな言いかたですけど、
萩本さん、「お金の使い道」ができて
しあわせですよね。
その年齢で、お金の使い道がある人、
なかなかいないですよ。 |
萩本 |
うん。
いい道楽してるね。
ぼく以外は、関わった人たち、
みんな、ソンしていないんだから。 |
糸井 |
年寄りは引退すると
買うものがなくなるし、
使い道に困っているんですよね。
世界旅行、ダイヤモンド……。
いろいろ、みんな、探すわけですけど、
こんなふうに
自分でチームを作るという遊びに
お金を使える人は、
世界にひとりだと思うんです。
萩本さんは、チームという
巨大な息子を持っちゃったようなものだから。
それにしても、ひとりの男が、
計画なしに走りはじめたものが、
よく、ここまで……。 |
萩本 |
計画ないし、
ルールもよくわかってないし。 |
糸井 |
うちにいたら携帯が鳴って、
「今、いい? あのね、
野球でこういうことやるの」
「あぁ、そうですか」
「それでね、
こういうことやってほしいの」
「よくわかんないけど……はい」
「じゃ、明日、発表しちゃうからね」
それで、すぐ、野球のチームが、
はじまっちゃったんだもんなぁ。 |
萩本 |
そうだね。
ものごとを、
まったくちがうところから考える人が
野球に必要だと思ったから、
糸井さんの名前があると、
「あ、何か変えようとしているんだ」
と、世間もわかりますもんね。 |
糸井 |
球団を作った、と発表して、
マークまで作って、
コーチも発表しているのに、
まだ、選手がいないというところから、
だれと試合をするかもわからないところから
はじまったんですもんね。 |
萩本 |
うん、まずは、
野球の絵が変わらないと、と思ってた。
野球場のスクリーンには、
お客さんも映る。マイクもふられる。
そうすると、お客さんが、
「自分も出るチャンスがあるかもしれない」
と、ドキドキしながら来るし、見るんだよね。
いつ、マイクが来るんだとドキドキしながら
野球を見るのと、
絶対に何も起こらないだろうなぁと思うのとは、
ぜんぜんちがうから。 |
糸井 |
ちっちゃいサーカスで、
ピエロの格好をした人が
ちっちゃいバッジを売りにくるだけで、
めちゃくちゃうれしいですもんね。 |
萩本 |
そうそう。
「オレんとこに来た!」って。 |
糸井 |
「参加」って、
やっぱりすごいんですね。 |
萩本 |
参加するかもしれないと思うと、
みんな、いいものを着てこようとか、
いい格好をしてこようとか、
スタンドの色が変わってくるのね。
そうすると、
野球が高級なものになるわけ。
お客さんが
いよいよタキシード着てきたとか、
映るかもしれないから
美人が集まるとか、
いずれそうならないと、高級にならない。
つまりお客さんが高級になるってことが、
高級な野球が誕生、生まれるってことで。 |
糸井 |
イギリスの競馬みたいなものですね。 |
萩本 |
そうそう。ですから、
お客さんに参加してもらうために、
マイクだけは、どうしても入れときたい、
と、公式戦以外は、ずっと入れているんです。
あたらしいことは、
つぎつぎにさけんでいかなきゃ。
野球は
いろんなところで
いろんなふうに語られているけど、
それを実行した人がいないんだよね。
いろんなことを言う人がいて、
それをどんどん実行するのがいいもん。
(次回に、つづきます) |