欽ちゃん!2006 

萩本欽一さんの、おもしろ魂。
最新の記事 2006/05/30
19 あとからふりかえる時期

糸井 強敵も客席も含めて
「相方」なんだというコンセプトは、
それを起点に、
いろいろと考えたくなるものですね。
萩本 ひとりでうまくいかなかったぼくが、
コント55号で
コンビを組んでうまくいったところを、
野球にとりいれればいいやと思ったの。
糸井 相方について
萩本さんがおっしゃることは、
はやい話が「敵を頼りにすればいいよ」
ということだもんなぁ。
萩本 いろんな相方がいるということが
たのしいんじゃないの?
巨人と阪神も、相方なんだもん。
だから、「いい相方」じゃないと、
やっぱり、お客さんが入らないんだね。
糸井 いい相方になるためには、
おたがいに、力をつける必要があるんですよね。
お客さんも、力をつけるべきとも言えるし。
萩本 そうよね。
糸井 「おもしろい!」
と味わえる力をつけた
いいお客さんがいたら、
見せる側のほうは、
こわくなって、自分を磨きますから。

萩本さんが
ソフトバンクの2軍と試合をしたとき、
「あ、これが
 欽ちゃんのやりかたなんだ!」
と、気づいたことがありました。

終わらなければならない時間だけど、
なんとか試合をつづけようというとき、
「え? ピッチャーがもういないの?」
「もう、選手の肩を冷やしたあとかー」
と、マイクで、
相手の事情も説明しているんですよね。

あれで、お客さんは、
「終わらなければならないのも、
 やむをえないんだな」
と思いながら、
どちらの結果になっても、怒らないで
見ていられるようになったんですよね。

相手を立てて話しあうから、
なんか、うまくいく……
「言ってることもわかるけど、やろうよ!」
とにかく、敵をつくらないんですね。
「おまえ、ヤなヤツだなぁ……
 そういうとこが大好きだよ!」と。
萩本 そうかもしれない。
舞台にのったら、
相手を好きになるしかないもんね。
他に、前に進む方法はないですから。

キライとかなんとか言っていると、
なにも、前に進んでいかないんですよ。

キライとかイヤだとかいうのは、
まぁ、終わってから話せばいいし、
まずは、タナあげしておいてさ……
「とにかく、今は好きだ!」と、前に進む。
糸井 スポーツ新聞に、
「欽ちゃん球団は……」
と、当たり前のように登場しているのは、
思えば、おかしなことですよね。
萩本 そうだよねぇ。
今までは、
プロの球団だけを紹介してたから。
糸井 スポーツ新聞に
ぴったりの素材ですよね。

スポーツ新聞は、
芸能とスポーツと賭けを扱うものだから、
そのうちの
芸能とスポーツが一体化しているものは、
記事にしたくなるんだろうなぁ。
萩本 プロ野球の物語は、
「勝ちたい」なのか、
「野球を見せたい」なのか、
はっきりしたほうがいいと思います。
「見てもらうんだ」と意識をすれば、
選手の士気もちがうんじゃないかなぁ。

あとで、新聞に載るんだと思うから
できることだって、あるだろうから。
糸井 相手をでたらめにしちゃう、
というのも、いいかもしれませんね。

日本で見る野球は、
おんなじような強さの人どうしで
やっているものが、ほとんどですから。

プロどうしの試合も、
社会人も、高校生も、
おたがいの実力差は、紙一重ですもんね。
プロと高校生が試合をしたら、
こんなもんだとかいうことも、
なんとなく、もう、想像ができてしまう。

だけど、
萩本さんのやりかたなら、
どんなチームとやっても
見せる野球として試合が成立するのが
おもしろいと思うんですよね。

アメリカの
マイナーリーグと試合をして
ボコボコにされてもおもしろいだろうし、
アジアの草野球チームを
ボコボコにしても、憎まれないし……
というところにいる球団なので、
海外に出かけて、
地元のヤツらと試合をするのは
いいんじゃないかなぁ。
萩本 客席の笑いをドカンドカンとって、
「こういう野球もあるんだ」
というのを、
本場のアメリカに
見せにいったほうがいいやね。
糸井 笑われたら、「勝ち」ですもんね。
強いアマチュアがいってしまえば、
日本の野球の水準を
代表しなければいけなくなるけど、
萩本さんのチームは、
笑われたら勝ち、というところだから。
萩本 海外でやるなら
マイクは通訳いれたほうがいいから、
9回もできないで、
4回ぐらいで終わりのほうがいいかもなぁ。

野球って、ながすぎると思うとき、ありません?
「……いつまでやってんの!」ってとき、あるよ?

「第1幕、休憩でございます」って言ったほうが、
売店にも人が集まるし、いいんじゃないのかなぁ。
糸井 第2幕は、「前半のあらすじ」から入る(笑)。
萩本 いいですねぇ。

「えー、ただいままでの
 あらすじを、ザッと説明いたします!
 こうなったところで、お時間が来ましたんで、
 そのままの状態で、1幕、終了いたしました!」

合間に、インタビューをしたりして。
「次のバッターは、どう攻めますか?」
「えー、休憩中にメシを食って、
 あらたな気持ちでのぞみたいです」

いそがなくていいよね。
審判が、たまに、
「いそいで、いそいで」って言うでしょう?
あらかじめつたえるならまだしも、
お客さんに、
いそぐ姿を見せるもんじゃないよなぁ。

……せちがらいところには、
義理と人情を、入れたくなるのよ。
糸井 しかし、ふつうなら
これからゆっくりするか、という年齢に、
とんでもないところに突っこみましたねぇ。
萩本 そうね。
何年か経ったあとに
「あれは、いったい、
 なんだったんだろう……」
って思うこと、よくあるじゃない?

今、きっと、「それ」だと思うのね。

野球の世界と芸能の世界とは
言葉がまるでちがうから、
これまでで、
いちばんたいへんだけど、
ぼくにとったら、それもおもしろいの。

テレビのときは、
たいへんだったけど、
ものを言って、前に進んでいけば
テレビ局がうしろについてましたから、
そんなに、つらくはなかったの。

ひとつずつ、なにかにぶつかるたびに、
説明しながら、
「こうなると、
 あそこが文句をいうだろう?
 そこをぶち抜くためには……」
と、ひとつずつ、仕事をつくっていった。

野球だって
「つよいところは、外野の選手、なし!」
と、ほかで絶対に見られないリーグを
つくればいいんじゃないか……
そんなことを、毎日しゃべってますけど。



(次回に、つづきます)
 
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