糸井 |
強敵も客席も含めて
「相方」なんだというコンセプトは、
それを起点に、
いろいろと考えたくなるものですね。 |
萩本 |
ひとりでうまくいかなかったぼくが、
コント55号で
コンビを組んでうまくいったところを、
野球にとりいれればいいやと思ったの。 |
糸井 |
相方について
萩本さんがおっしゃることは、
はやい話が「敵を頼りにすればいいよ」
ということだもんなぁ。 |
萩本 |
いろんな相方がいるということが
たのしいんじゃないの?
巨人と阪神も、相方なんだもん。
だから、「いい相方」じゃないと、
やっぱり、お客さんが入らないんだね。 |
糸井 |
いい相方になるためには、
おたがいに、力をつける必要があるんですよね。
お客さんも、力をつけるべきとも言えるし。 |
萩本 |
そうよね。 |
糸井 |
「おもしろい!」
と味わえる力をつけた
いいお客さんがいたら、
見せる側のほうは、
こわくなって、自分を磨きますから。
萩本さんが
ソフトバンクの2軍と試合をしたとき、
「あ、これが
欽ちゃんのやりかたなんだ!」
と、気づいたことがありました。
終わらなければならない時間だけど、
なんとか試合をつづけようというとき、
「え? ピッチャーがもういないの?」
「もう、選手の肩を冷やしたあとかー」
と、マイクで、
相手の事情も説明しているんですよね。
あれで、お客さんは、
「終わらなければならないのも、
やむをえないんだな」
と思いながら、
どちらの結果になっても、怒らないで
見ていられるようになったんですよね。
相手を立てて話しあうから、
なんか、うまくいく……
「言ってることもわかるけど、やろうよ!」
とにかく、敵をつくらないんですね。
「おまえ、ヤなヤツだなぁ……
そういうとこが大好きだよ!」と。 |
萩本 |
そうかもしれない。
舞台にのったら、
相手を好きになるしかないもんね。
他に、前に進む方法はないですから。
キライとかなんとか言っていると、
なにも、前に進んでいかないんですよ。
キライとかイヤだとかいうのは、
まぁ、終わってから話せばいいし、
まずは、タナあげしておいてさ……
「とにかく、今は好きだ!」と、前に進む。 |
糸井 |
スポーツ新聞に、
「欽ちゃん球団は……」
と、当たり前のように登場しているのは、
思えば、おかしなことですよね。 |
萩本 |
そうだよねぇ。
今までは、
プロの球団だけを紹介してたから。 |
糸井 |
スポーツ新聞に
ぴったりの素材ですよね。
スポーツ新聞は、
芸能とスポーツと賭けを扱うものだから、
そのうちの
芸能とスポーツが一体化しているものは、
記事にしたくなるんだろうなぁ。 |
萩本 |
プロ野球の物語は、
「勝ちたい」なのか、
「野球を見せたい」なのか、
はっきりしたほうがいいと思います。
「見てもらうんだ」と意識をすれば、
選手の士気もちがうんじゃないかなぁ。
あとで、新聞に載るんだと思うから
できることだって、あるだろうから。 |
糸井 |
相手をでたらめにしちゃう、
というのも、いいかもしれませんね。
日本で見る野球は、
おんなじような強さの人どうしで
やっているものが、ほとんどですから。
プロどうしの試合も、
社会人も、高校生も、
おたがいの実力差は、紙一重ですもんね。
プロと高校生が試合をしたら、
こんなもんだとかいうことも、
なんとなく、もう、想像ができてしまう。
だけど、
萩本さんのやりかたなら、
どんなチームとやっても
見せる野球として試合が成立するのが
おもしろいと思うんですよね。
アメリカの
マイナーリーグと試合をして
ボコボコにされてもおもしろいだろうし、
アジアの草野球チームを
ボコボコにしても、憎まれないし……
というところにいる球団なので、
海外に出かけて、
地元のヤツらと試合をするのは
いいんじゃないかなぁ。 |
萩本 |
客席の笑いをドカンドカンとって、
「こういう野球もあるんだ」
というのを、
本場のアメリカに
見せにいったほうがいいやね。 |
糸井 |
笑われたら、「勝ち」ですもんね。
強いアマチュアがいってしまえば、
日本の野球の水準を
代表しなければいけなくなるけど、
萩本さんのチームは、
笑われたら勝ち、というところだから。 |
萩本 |
海外でやるなら
マイクは通訳いれたほうがいいから、
9回もできないで、
4回ぐらいで終わりのほうがいいかもなぁ。
野球って、ながすぎると思うとき、ありません?
「……いつまでやってんの!」ってとき、あるよ?
「第1幕、休憩でございます」って言ったほうが、
売店にも人が集まるし、いいんじゃないのかなぁ。 |
糸井 |
第2幕は、「前半のあらすじ」から入る(笑)。 |
萩本 |
いいですねぇ。
「えー、ただいままでの
あらすじを、ザッと説明いたします!
こうなったところで、お時間が来ましたんで、
そのままの状態で、1幕、終了いたしました!」
合間に、インタビューをしたりして。
「次のバッターは、どう攻めますか?」
「えー、休憩中にメシを食って、
あらたな気持ちでのぞみたいです」
いそがなくていいよね。
審判が、たまに、
「いそいで、いそいで」って言うでしょう?
あらかじめつたえるならまだしも、
お客さんに、
いそぐ姿を見せるもんじゃないよなぁ。
……せちがらいところには、
義理と人情を、入れたくなるのよ。 |
糸井 |
しかし、ふつうなら
これからゆっくりするか、という年齢に、
とんでもないところに突っこみましたねぇ。 |
萩本 |
そうね。
何年か経ったあとに
「あれは、いったい、
なんだったんだろう……」
って思うこと、よくあるじゃない?
今、きっと、「それ」だと思うのね。
野球の世界と芸能の世界とは
言葉がまるでちがうから、
これまでで、
いちばんたいへんだけど、
ぼくにとったら、それもおもしろいの。
テレビのときは、
たいへんだったけど、
ものを言って、前に進んでいけば
テレビ局がうしろについてましたから、
そんなに、つらくはなかったの。
ひとつずつ、なにかにぶつかるたびに、
説明しながら、
「こうなると、
あそこが文句をいうだろう?
そこをぶち抜くためには……」
と、ひとつずつ、仕事をつくっていった。
野球だって
「つよいところは、外野の選手、なし!」
と、ほかで絶対に見られないリーグを
つくればいいんじゃないか……
そんなことを、毎日しゃべってますけど。
(次回に、つづきます) |