欽ちゃん!2006 

萩本欽一さんの、おもしろ魂。
最新の記事 2006/06/01
21 ヤジでは、勝てないよ

糸井 高校野球で
「負けた学校が歌をうたう」
というアイデアは、
ほんとに見事だと思う。
誰も、こまらないし。

歌なら、誰も怒らないですよね。
勝ったチームは、
勝ってよかった、なんだもん。

「歌ぐらい、くれてやれ」ですよね。
萩本 (笑)そうだそうだ。歌ぐらい。
糸井 サッカーなんかで
ユニフォームを交換しますけど、
贈りあうものを持ってきてると、
いいかもしれませんね。
萩本 いいねぇ。
野球をとおして、町が見えてくる。
同時に、物産展にもなっちゃうの。
糸井 まずは、県の花の交換から……。
萩本 そうすると、
はっきり、わかるもんね!
糸井 客席レベルでも、
花を贈りあえばいいんじゃない?
萩本 いいねぇ……
今度、ウチにとりいれよう(笑)。
糸井 (笑)結局、なんか、ムリなことを
ひとつふたつ、入れたほうがいいですよね。

それで、最後は、負けたほうがうたう、と。

「ウチは、歌、ないんで、
 ハウンドドッグの、うたってイイですか?」

負けたほうがうたう、のひとことで、
どんどん、いろんな発想が出ますよね。

勝ったほうが
うれしがりすぎると、
みっともなくなりかねない……。
だから、掃除をしていくだとか。
あまりに、よろこびすぎるより、
「いや、勝負は、紙一重ですから」
と、殊勝にね。

そうじゃないと、
「次から、
 あいつらとやりたくないよなぁ」
と思っちゃうもん。

ガッツポーズも、
ふだんしない、地味な選手が
ちっちゃくするから
「オマエの気持ち、わかる!」
と思えるのであって。

つよい人は、誇りすぎたらいけない、と……
「実るほど 頭を垂れる 稲穂かな」
萩本さんのチーム、そんな方針はどうですか?
萩本 (笑)ええ、そうしますよ。
ただ、応援している人たちは、
勝つと、よろこんでくれるんでね。
糸井 誇りすぎない気持ちが
つたわってきたら、
いい応援団になりますよね。

阪神の金本選手とか、
相手のチームからも
拍手がもらえる人ですよね。
ああいう紳士的なシーンで、
「野球って、いいよなぁ」と思いますから。
萩本 ただ、ベンチにいると、
ヤジは、品がないよねぇ……。

こないだも、
向こうから、ヤジがきこえてきたの。
ただ、そのヤジをきいたときに、
「あ、勝った!」と思ったのよ。

うちよりもヤジがうまいんだもん。
ヤジでは、神さまは、勝たせないよ。

でも、ヤジは、習慣なのかなぁ。
なくならないね。
糸井 相手のイヤがることをするのが
野球だとは言いますけど、どんどん
そればかりをつみかさねてしまうと、
キリがなくなっちゃうと思うんですよ。
「どこまで、きれいな野球を目指すか」
これは、チームの方針として、
それぞれが、掲げていればいいと思うんです。

「負けても、かっこいいチームだよなぁ」
それが、亡くなった藤田監督の野球のことを
ぼくが、大好きだった理由のひとつですから。

人が、絶対にイヤがることを言われて
打てませんでした、ということをやるなら、
「家に火をつけてもいい」
みたいなレベルまで、いっちゃいますもん。
萩本 ただ、公式戦なんか
マイクを持たないから、することがなくて
ぼくは、遠くにいますからね。

関ヶ原の合戦で
徳川家康は、最前線を見てなかっただろうな、
と思うから。

「今、どうなってる? 打たれているか?」

そのほうが、冷静に見ていられるの。
ベンチに入っていると、試合がおもしろすぎて、
作戦なんて、考えられなくなっちゃうから。
そうすると、おもしろさに連れていかれて、
作戦の判断が、狂っちゃうんじゃないのかなぁ?

ただね、選手たちは、
「あーあ、ホームランを打ったのに、
 監督が、見てなかったんだもんな……」
って、ボヤいていますけどね。
「そういう、
 運のないホームランは打たないでほしい。
 監督が、たまたま見ているときに打とうな!」
そう、つたえているの。

監督の目線で見ていると、
「ここで打ってほしいな」
というときに打つのが、大事ですよね。
何割打ったかは、あんまり、関係ない。
大事なとこしか、見にいかないんだもん。
「ここで、もしも打ったら、エライよぉ!」
そのときに、ベンチにはいるんですから。
糸井 野球をやって1年経つのに、
萩本さん、そのスタンスが
野球をする前から変わっていないのが、
すごいなぁ、と思いますよね。

ふつうだったら、
「野球に詳しくなったので、
 乱暴なことを言っていた昔の自分とは
 ちがってきちゃったんですよ」
という要素が、出てくるころですから。
萩本 ぜんぜん、野球に詳しくならないのよ。



(次回に、つづきます)
 
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