スギヒラタケ 毒
写真と文章/新井文彦

さっぱりとして歯ざわりがよく、
和、洋、中、いずれの料理にもよく合い、
簡単に見分けがつくうえに、たくさん採れる。
三拍子揃った日本を代表する優秀な食菌、でした。
そう、あの年の、秋までは……。

2004(平成16)年の秋、
秋田、山形、新潟の各県を中心に、
原因不明の急性脳症を発症する人が相次ぎ、
そのうち、十数人が死亡しました。
患者の共通点は、腎機能の障害があったこと、
そして、何と、スギヒラタケを食べたこと!

チマタでは、
ウイルスや、特殊な化学物質が付着した、という説や、
突然変異で毒を持った、などという説が、
まことしやかに飛び交い、謎が謎を呼びました。

同時に食べた家族は発症してないことなどから、
上記各仮説は、とりあえず、ボツ。
(当然、ボツ、の理由は他にもいろいろあります)

危うきは食せず、という「きのこの鉄則」により、
原因はともかく、以降、スギヒラタケは、
毒きのこ、という扱いになったのでした。

スギヒラタケが原因と考えられる急性脳炎が、
2004年の秋に、突如、多く発症したのは、
前年に公布された「改正感染症法」により、
急性脳炎患者が発生した場合に、
行政への届出が必要になったことが挙げられます。

急性脳症を引き起こした原因を、
それこそ、徹底的に調べたんでしょうねえ。
そして、犯人として浮かび上がってきたのが、
それまで優秀な食菌とされていた、
あの、スギヒラタケだったと……。

林野庁のウェブサイトによると、
スギヒラタケに含まれる成分が、
急性脳症発生の原因となる可能性を示唆する成果を得た、
(正確を期すためでしょうが、ややっこしい言い回し!)
とのことです。

みんな知らずに食べていたけど、
スギヒラタケは、元々毒きのこだった!
ってことで決着しそうな感じですねえ……。

知らないきのこはもとより、
知っているきのこでも中毒しちゃうなんて、
きのこ、本当に、恐るべし!

今回は、ちょっと内容がカタくなってしまいました。
ふう……。

参考文献
「きのこの下には死体が眠る!?」(技術評論社)吹春俊光著
「日本の毒きのこ」(学習研究社)

※このコンテンツでは、 きのこの食毒に触れてますが、 実際に食べられるかどうかを判断する場合には、 必ず専門家にご相談ください。
 
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