まずは、じっくりと、森の雰囲気をご堪能あれ。
小さな沼のほとりに広がる、トドマツの森。
そこに、広大な森の面積からすればわずかですけど、
林床がすべてコケにおおわれている一画があります。
お昼寝をしている白くまの背中に顔をうずめたような、
濃い霧が立ち込める、夏と秋が重なりはじめた朝。
太陽が顔を出す時間が、夏至の頃に比べると、
だいぶ遅くなってきました。
少し湿った土臭いような、森の香り。
全身を包み込む、心地良い湿気と冷気。
遠くで響くクマゲラのドラミング(木を突っつく音)、
そして、トドマツの葉っぱから滴り落ちる朝露の音。
深呼吸、深呼吸……。
しばらくすると、霧が金色に輝き出して、
はっきりした太陽の光が射しこんできます。
そんな瞬間を目の当たりにすると、
はっきり言って、写真を撮ることなんか、
どうでもよくなっちゃうんですよねえ。
この時、この場所にいられる幸運!
霧が晴れて木々の輪郭がはっきりしてきたら、
本分を思い出し、いそいそと撮影準備。
まだまだ余韻が抜け切らないので、
きのこなんか見つからなくてもいいか、と、
探索行動が多少投げやりになるのは仕方ありません。
森の底を覆いつくした、コケや地衣類を、
なるべく踏まないように、シカの獣道を歩き、
コケコケの森に生を受けた、きのこを探します。
きのことコケはすごく親和性が高いから、
じっくり探せば、すぐに……。
はい、シラガツバフウセンタケ、見っけ!
別に食べられるわけでもなく、
色や形に特徴があるわけでもありませんが、
この森に生えている、というだけで、
何か、特別なきのこのように思えませんか(笑)?
シラガツバフウセンタケは、図鑑などによると、
落葉広葉樹林の地上から発生する、とあります。
この写真の個体は、針葉樹林に生える、類似の別種?
と、いう可能性も否定できませんが、
トドマツの森、と言っているものの、多少は、
ダケカンバやミズナラなどの広葉樹が生えているので、
そちらと関わりがある、と考えればいいですかね。
それにしても、この森、いいでしょ!
朝露でびしょ濡れになっちゃうので、
晴れていても、レインウエアは要着用です。 |