これは、食毒不明なんです。
ヌメリニガイグチ 食毒不明
写真と文章/新井文彦

久しぶりに、イグチさんの登場です。

別に派手な色をしているわけではなく、
変った形をしているわけでもありませんが、
こういうきのこを発見することが、
森歩きの醍醐味なんですよねえ。

どうです、この悩殺的なポーズ(笑)。
見つめていると、何かを思い起こしませんか?
って、無理がある質問ですね。
ふふふ、このきのこ、あの、
江戸時代の浮世絵師・菱川師宣の大傑作、
「見返り美人」に見えませんか?

そう言われると、見えないことはないかも、
と、思った人、あなたは実にいい人です(笑)。

目の前に、和装の背中美人がいます。
男なら、誰でも「おっ」と思いますな。
小さな幸せを感じているところで、その背中美人が、
すっと、後ろを振り返るわけですよ。
すっと。
色白で、細面で、きめ細かい肌……。

篠山紀信先生のごとく、
カシャカシャと激写したことは、
言うまでもありません。
きのこにしておくには、惜しい逸材です(笑)。

森を歩いていると、たまにですけど、
想像力をかきたてられる場面に遭遇します。

と、まあ、おバカな話はさておき。

ヌメリニガイグチの特徴といえば、
その名前のとおり、傘がぬめっていること。
ナメコとか、ヌメリササタケとか、
森には、触るのを躊躇したくなるほど、
ぬるぬる、ぬめぬめしたきのこが、
けっこうたくさん生えています。

実は、この、ぬるぬる、ぬめぬめは、
ナメクジとか、虫から、きのこを守っている、
という説があるようです。
自己防衛?

写真データをパソコンに取り込み、
画面一杯に拡大表示してみると、
きのこのぬるぬるに絡め取られてしまった、
小さな羽虫の哀れな姿が、しばしば確認できます。
きのこファンとしましては、
志半ばで逝った虫さんたちの冥福を祈るより、
よくぞ我が身を防衛したなあ、と、
きのこにエールを送るわけです(笑)。

どの図鑑を調べても食毒不明、とあるのですが、
名前が、ヌメリニガイグチ、と言うくらいなので、
味は、きっと、苦いのでしょう……。
まあ、無理して食べることはありませんね。

※このコンテンツでは、 きのこの食毒に触れてますが、 実際に食べられるかどうかを判断する場合には、 必ず専門家にご相談ください。
 
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