おしい!食べられるんです!
オトメノカサ 食
写真と文章/新井文彦

きのこを探しながら森を歩く回数が増えると、
いわゆる「きのこ目」が強化されて、
自然にきのこが目につくようになります。
落葉やコケの間や、枯木のうろの中に生えている、
たった1本の小さなきのこを見つけたりとか。
本当です。

でも、きのこだと思って近づいてみたら、
木の模様だったり、鳥やシカのフンだった、
なんていう場合も、たまにはあります(涙)。
都会だったら、ゴミと見間違ったりね。
それじゃあ「きのこ目」じゃなく「空目」ですな。

で、まあ、いかにも良さそうな場所で、
きのこを見つけようものなら、
たぶん違うよなあ、と外れたときの保険をかけつつ、
でも、すごく期待して、徐々に近づいていきます。
そして、それが、本物だった時の喜びたるや!

この、オトメノカサも、
そんな理想的なシチュエーションで撮影しました。
ほとんど朽ちて苔むした倒木の、
しゃがんで丁度目の高さくらいの位置に、
汚れを知らないような小さくて純白のきのこ。
誰かがしつらえたと、疑いたくなっちゃいます。
それにしても、いやあ、きれいですよねえ……。

傘の直径は2センチくらい。
小さいし、収穫量もあまり期待できませんが、
食べられることは、食べられます。
味は、すっきり、さっぱり系、というか、
あまり、よくわかりません(笑)。
きゅりきゅりとした食感を前歯で楽しめますが。

それにしても、森を歩いていると、動物の気配に、
だんだん敏感になっていくのがわかります。
藪の中で、ごそごそ動く音にハッとしたり、
ケモノ臭いクマの匂いを感じ取ったり。

たいして強くもなく、大きくもないニンゲンが、
弱肉強食の森の中に身を置いたとき、
わずかでも、生き残る可能性を高めようとするなら、
事前に敵を察知して逃げることではないかと思います。
まず頼るは、鼻でもなく、耳でもなく、目ですよね。

黒い点が二つ並んでいて、その下に長い筋があれば、
何かの顔だとみなして、すかさず逃げる。
早く気づくことが最優先なので、精度なんか二の次です。
どこか安全な場所に落ち着いてから、
あれは、やっぱり、木の模様だったかなあ、とか(笑)。
しかし、それでも「空目」という能力は素晴らしい!

この、オトメノカサにそっくりの、
シロヒメカヤタケという毒きのこがあります。
どうぞ、くれぐれも、ご注意のほどを。
「きのこ目」と「空目」を以てしても、
残念ながら、毒きのこには通用しません。

※このコンテンツでは、 きのこの食毒に触れてますが、 実際に食べられるかどうかを判断する場合には、 必ず専門家にご相談ください。
 
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