正解、食べられます!
カラスタケ 食
写真と文章/新井文彦

森で、カラスタケを見つけると、
もはや、条件反射と言うべきか、頭の中で、
きりっとした三味線の音が、ペケペンペン、と流れ始め、

三千世界の~鴉(カラス)を~殺しぃ~
主(ぬし)と朝寝が~してみたい~

と、艶やかで張りのあるお姐さんの声が……(笑)。
幕末の志士・高杉晋作の作とされる都々逸ですね。
昔から、カラスは、二人の朝寝を邪魔するほど、
うるさく鳴いていたんでしょうかねえ……。

阿寒湖温泉街にも、カラス、たくさんいます。
賢くて、順応性があるから、
人間の生活圏で、より楽に生きていけることを、
だんだん学習していったのかもしれません。

ただ、カラスを「害鳥」にしてしまったのも、
害鳥とみなしているのも、人間。
カラスに罪はありませんよね。

さすがのカラスも、森で生きていくのは辛いのか、
森の奥へ入っていくと、ほとんど見かけなくなります。
阿寒の森で見かける「二大カラス」と言えば、
カラスアゲハと、この、カラスタケ。
両方とも、その名の通り、外観が、真っ黒けです。

カラスタケは、一見、マイタケっぽく見えますが、
分類的には、まったく別の仲間。
阿寒では、夏から秋にかけて、
トドマツの森で見ることが多いです。
大きいものは、径が30センチ以上にもなります。

よく見ると、1本の柄がいくつも枝分かれしていて、
一つひとつの傘は、ヘラや扇の形をしています。
触ると、少し湿っていて、肉厚で、ぷりぷり。
我が愛するシングルモルトウイスキー、
ラフロイグを彷彿させるような香りがします。
あ、分かりづらい例えですか(笑)?
よく言われるのは、海藻のひじき臭だそうです。
ひじき……。

で、このカラスタケ、食べられます。
しかしながら、マイタケに似ていますけど、
分類と同じく、味も、香りも、まったくの別モノ。
ぷりぷりの食感を生かしつつ、
いかにラフロイグ臭を消すか、
が、料理の腕の見せ所ではないかと思われます。

最初はいくらか青っぽく見えるカラスタケですが、
乾燥してくると、だんだん黒くなり、
いわゆる、烏の濡羽色のようになっていきます。
(乾燥しているのに濡れ羽色……)

ちなみに、森で、
オチバタケを見つけたときのテーマソングは、

かきねの かきねの 曲がり角
たき火だ たき火だ オチバタケ~。

※このコンテンツでは、 きのこの食毒に触れてますが、 実際に食べられるかどうかを判断する場合には、 必ず専門家にご相談ください。
 
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