阿寒国立公園の名峰・雌阿寒岳は、
標高1499メートルの、活火山。
阿寒湖温泉街からは、やや見えづらいのですが、
阿寒湖上、また、神秘の湖と言われるオンネトーから、
お隣にそびえる阿寒富士とともに、
噴煙を吹きあげる雄大な姿を眺めることができます。
いわゆる「日本百名山」のひとつで、
夏山シーズン中の週末ともなれば、
全国から集まった多くの登山客で賑わうのですが、
実は、その麓に広がるオンネトー周辺の森とともに、
素晴らしいきのこスポットなんです。
オンネトー越しに雌阿寒岳を見ると、
下から、樹林帯、ハイマツ帯、瓦礫帯と、
きれいに3つに分かれているのが確認できます。
下部の樹林帯を形成するのは、
厳しい環境への耐性などによって、
森の主役となった、アカエゾマツ。
純林、と言われるほどに、
雌阿寒岳の1合目から2合目にかけて、
それはそれは見事な森が広がっています。
天に向ってほぼ真っ直ぐに伸びる、
樹齢数十年から数百年の、アカエゾマツ。
見渡すかぎり、アカエゾマツ。
空気まで、アカエゾマツ。
多少の雨が降っても傘がいらないほどに、
頭上も生い茂る葉っぱでおおわれています。
この森の風景を見て、空気を吸っていれば、
もう何もしなくてもいい、何もしたくない、
と思うくらい感動するのが常なのですが、
あるんです、きのこが(笑)。
降り積もった落葉とコケと地衣類がびっしり、
苔むした大きな岩や石が点在する林床の様子は、
まるで日本庭園と言いたくなるような雰囲気。
きのこ好きも、コケ好きも、地衣類好きも、
しばし言葉を失うこと間違いなし。
絶景です、絶景。
この森では、不思議なことに、
シラカンバ(白樺)の菌根菌として知られている、
ベニテングタケの姿を見ることもできます。
さて、この、ムラサキナギナタタケは、
夏の終わり頃、雌阿寒岳のだいたい3合目付近、
アカエゾマツとハイマツが入り交じる辺りで、
毎年、大量に発生します。
図鑑などには「さっぱりとして癖がない」、
などと書いてありますが、要は、
ほとんど味がしない、ということですよね(笑)。
中空で、触るとポキポキ折れてしまうので、
食感も期待できそうにありません。
「神妙にして、そこにお直りなさい
先祖伝来の刃のサビにして差し上げます」
と、思わず時代小説のセリフを想像してしまうような、
日本古来の武器、薙刀(なぎなた)が、
ナギナタタケの名前の由来なのですが、
シロヤリタケとか、シロソウメンタケとか、
この手の棒状のきのこは、見た目そのまんま、
という感じで名付けられていることが多いです(笑)。
最後に、重要なことを。
国立公園では植物の採取が規制されてます。
(私有地は言うまでもありません)
ところが、きのこは、菌類。
植物ではないので、通常は、採取しても、
実は、おとがめなし、なんです。
しかしながら、
阿寒湖周辺で言うなら、
マリモの生息地付近を含む雄阿寒岳一帯、
そして、雌阿寒岳一帯は、
国立公園の特別保護地区に指定されているので、
きのこも採取することができません。
きのこ狩り・観察へ出かける場合には、
十分に下調べしてからお出かけ下さいね。 |