緑のコケに、赤いきのこ。
森の中で、こんなシチュエーションに出合えるなんて、
きのこ探し冥利に尽きるというもの。
見ているだけで、大盛りご飯3杯はいけます(笑)。
心ゆくまで、余韻に浸り、
森の風景としてのきのこを十分に堪能し、
落ち着きを取り戻してから、
今度は、じっくりと、きのこそのものを楽しみます。
きのこの名前を同定する基本は、
とにかく、見て、見て、見まくること。
赤い傘の直径は10センチ前後。
それほど粘性はない。
傘裏は、ヒダではなく、管孔。
つまり、イグチ系のきのこ。
管孔は黄色くて、目がすごく細かい。
柄は白っぽい淡黄色。
下部に向かうに従い、赤く、かつ、太くなる。
柄の全体に網目模様が入っている。
ちょっと触ると色が青く変わる。
などなど。
これらの特徴をすべて満たすのは……?
はい、優秀な食菌、アカジコウです。
とはいえ、ぼくの頭の中に、
きのこ知識がぎっしり詰まっているわけではなく、
特徴を撮影したり、メモしたりして、
森から戻ってきて、図鑑を調べまくるわけでして。
そう、生えている環境も重要な情報ですね。
一緒に写っているコケは、おそらく、
左がオオスギゴケ、右がホソバミズゴケかと。
さて。
アカジコウのお味は、あの、
イタリアで言うポルチーノ、フランスで言うセップ、
いわゆるひとつの西洋料理界の大スターきのこに、
匹敵すると言われております。
上品なコクと旨み。
ナッツを彷彿させるほのかに甘い香り。
肉質は締まりカプリとした歯ごたえ。
更には、見た目にも華やかな色合い……。
そして、そして、これが、また、
オリーブオイルとニンニクとの相性が抜群なんだなあ。
ずずず。
あ、よだれ、よだれ(笑)。
機会があれば、ぜひともお試しいただきたい、
森の逸品中の逸品でございます。
ただし、アカジコウは、
似ているきのこがたくさんあるうえ、
柄がさらに黄色味を帯びていたり、
傘の色が赤黄色だったりと、
個体差がけっこうあります。
似ているきのこに、猛毒のものはありませんが、
食べる際には、十分にご注意ください。
ちなみに、
きのこらしからぬ、アカジコウ、という名前は、
一部地域の方言で、きのこ、特に、食用のイグチを、
ジコウ、または、ジコボウ、ジコウボウ、
などと呼ぶことから名付けられたのではないか、
と、真偽は定かではありませんが、
個人的に、推測しております。
漢字で書くと「赤時候」です。 |