ツチグリ 食不適
写真と文章/新井文彦

夜、阿寒湖温泉街から車で5分も走れば、
街の灯りがほとんど見えない真っ暗闇に。
天の川の中洲がはっきりわかるほど、
星、また、星の感動的な夜空を見ることができます。

銀河の星も、太陽も、地球も、人も、きのこも、
原料は、宇宙で生まれた、わずか100個くらいの原子。
星空を見上げたとき、なんとなく郷愁を感じるのは、
そこが、自分の根源的な故郷だからかもしれません。

「宇宙物理学」とか「宇宙論」などと聞くと、
すぐにアタマがくらくらしてしまうのですが、
最近の定説では、ビッグバンが宇宙の始まりではなく、
想像を絶するほど、ものすご〜く小さい小さい、
量子宇宙なるものがまずあって、
それが急膨張したと思ったら急に止まって、
ば〜ん、と大爆発、いわゆるビッグバンが起きた、
と、いうことらしいです。
理解できるような、できないような……。

何はともあれ、光り輝く星も、我々人間も、
宇宙に存在するもののすべてが、
約137億年前に生まれた宇宙の子どもなんですよね。

さて、写真のきのこは、ツチグリ。
どこにあるの?という声が聞こえてきそうですが、
シュンランの下にある、星型の物体が今回の主役です。

学名を日本語に訳すと「星の湿度計」。
なんとなく、ロマンちっくな名前ですねえ。
それもそのはず、ツチグリは、
湿度と切っても切れない生き方をしているんです。

成熟したツチグリは、湿度を感じると、
まるでみかんの皮をむいたように、
外皮がめくれていって、星型に開きます。
まあるい内皮のてっぺんには穴が開いていて、
雨粒が当たると、その刺激を受けて、
そこからぶわ〜っと胞子を大放出。
雨が止み、湿気がなくなると、
またまた外皮を閉じるというわけ。

いわゆる「きのこ」は、
胞子を放出散布するための器官なので、
効果的に、確実に、胞子をばらまくために、
様々な方法を編み出しているんです。
雨を利用するなんて、すごいシステムでしょ?
きのこって、すげえなあ……。

クイズの正解は、食不適、としましたが、
地方によっては、ツチグリの幼菌を、
炊き込みご飯などにして食べることもあるようです。
いったい、どんな味がするんでしょうか?

森に舞い降りた小さな星、ツチグリ。
その存在を見ているだけでも、
ロマンチックな気分にひたれる、
実に素晴らしいきのこです、はい。

※このコンテンツでは、 きのこの食毒に触れてますが、 実際に食べられるかどうかを判断する場合には、 必ず専門家にご相談ください。
 
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