不正解、食べられます!
カノシタ 食
写真と文章/新井文彦

フランス料理の高級食材として知られるきのこを、
今までにも、いくつかご紹介してきました。

例えば、オロンジュ。
日本名は、タマゴタケです。
ピエルージュは、アメリカウラベニイロガワリ
ボレロワイヤルは、アカジコウのことです。

そして、今回ご紹介させていただくきのこは、
フランス語で言うところの、ピエ・ド・ムートン。
大変、おいしゅうございます。
絶品です。

素材の味を生かすために、シンプルに料理しましょう。
シャキシャキのエシャロットとニンニクを刻んで加え、
ややたっぷり目のバターで、さっと炒めます。
仕上げに、イタリアンパセリを、フワリ、パラリ。
キリリ、と冷えた白ワインと一緒にいただけば、
目を閉じて、セ・トレボン!とうなるしかありません。

皆さまも、夏の終わりから秋にかけての、
シーズンになったら、ぜひ、お試しなさいませ。
と、言うことで、では、また、来週。
さようなら。

あ、ここで、終わっちゃいけない(笑)。
改めて、きのこの話をさせていただきます。
ええと、そうそう、
ピエ・ド・ムートンこと、カノシタですね。

ピエ・ド・ムートンの意味は「羊の足」。
一方、カノシタは「鹿の舌」です。
いずれも、このきのこの最大の特徴である、
傘の裏をびっしりとおおう、
針状の突起をイメージして名付けられたのでしょう。
ぴったりのような、違うような……。

舌が針状でザラザラしている動物と言えば、
タイガーに、レパードに、ライオンなど、
マッキントッシュ用のOS名を彷彿させる、
ネコ科の大型肉食獣、と相場が決まってます。
餌である動物の骨に付いている肉を、
舌でこそげ落として食べるわけですから、
おろし金のようでなければ用をなしません。

ちなみに、ぼくは、北海道で長く暮らしているので、
エゾシカの舌を見る機会が何度もありましたが、
(そして、何度もおいしく食べましたが)
本物の鹿の舌は、牛の舌同様思ったよりなめらかで、
きのこのカノシタの針状の突起とは、
ちょっとだけ違うように思えます。

ま、それはそれとして。

カノシタの形状は、この写真のように、
きのこっぽい形をしているのはけっこうまれで、
黄色っぽい傘が大きく波打っていたり、
ずんぐりむっくりしていたりと、百菌百様。
全身真っ白な、シロカノシタも、
色以外は、味、特徴ともに、カノシタと同様です。

また、思いの外、もろいきのこで、
強く触ったりするとぼろぼろ崩れてしまうので
採取して、持ち帰る際には、ご注意のほどを。

では、ジュ・テーム!
じゃなかった、オ・ルヴォワール!

※このコンテンツでは、 きのこの食毒に触れてますが、 実際に食べられるかどうかを判断する場合には、 必ず専門家にご相談ください。
 
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