アカヤマタケ 毒
写真と文章/新井文彦

阿寒の森では、夏から秋にかけての早朝、
ほとんど毎日のように、霧が発生します。
温泉街が目を覚ます前に、急いで準備をして森へ。
その日の気分で、
アカエゾマツの森へ行ったり、
トドマツの森へ行ったり……。

手に持った熊鈴をチリンチリン鳴らしながら、
きのこや粘菌(変形菌)を探していると、
いつしかシジュウカラやコガラが鳴き出していて、
森が明るくなっていることに気づきます。

そして。

そよ、とした風が吹きます。
霧が、ミルク色から黄金色へ色を変えると、
森の輪郭がみるみる元の姿を取り戻し、
太陽と森の大きな木々がつくりだした光の帯が、
幾筋も幾筋も林床に差し込みます。

そんなシーンに見とれていて、気がつくと、
写真を撮るのを忘れているわけです(笑)。
その瞬間、その場所にいられることの幸せ……。
みなさん、ぜひ、阿寒の森へいらっしゃい。

そして、そんな、夏から秋にかけて、
針葉樹林といわず、広葉樹林といわず、
そう頻繁ではありませんが、
阿寒の森のあちこちで見かけるのが、
我らが、アカヤマタケです。

その特徴を整理してみましょう。

発生時期は、夏から秋にかけて。
大きさは、傘の直径が2〜4cmくらい。
傘にも柄にもうっすらと縦筋が入り、かつ、
赤や黄色やオレンジが交じり合ったようなド派手な色彩。
幼菌の時はもとより、成長しても、
傘のてっぺんが尖ったままの円錐形。
老成したとき、また、触ったときは、色が黒く変色。
そして、ロウソクを思わせるような、
ちょっと湿り気があって、つるつるした触感。

と、いうことで、これらの条件に、
すべて当てはまるきのここそ、
我らがアカヤマタケ、というわけです。

え?条件が多すぎ?
いやいや、合致する特徴が多いからこそ、
個体判別に確実さが増すわけです。

こんなド派手な容姿をして、
森や里山や街の公園など、さまざまな場所で発生し、
また、分布も、日本だけではなく、ほぼ全世界的。
アカヤマタケくんって、実は、
目にする機会がけっこう多いきのこなのです。

アカヤマタケが食べられるかどうかは、
図鑑によっても、また国や地域によっても、
諸説さまざまあるのですが、
「毒」とする図鑑もあるので、
迷うことなく毒きのこだとみなすことにします。

と、いうことで、アカヤマタケは、
目と手!で楽しませていただくとしましょう。

※このコンテンツでは、 きのこの食毒に触れてますが、 実際に食べられるかどうかを判断する場合には、 必ず専門家にご相談ください。
 
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