おしい!食べられるんです!
ヌメリスギタケモドキ 食
写真と文章/新井文彦

阿寒湖畔の夏は、内地にくらべて涼しいとはいえ、
最高気温が30度を超えることも珍しくありません。

とはいえ、
湿度が低いので日陰に入れば涼しく感じますし、
朝夕は、ぐぐぐっと冷え込み、
ほぼ確実に、20度を下回りますから、
暑くて寝苦しいということは、まずありません。

夏の盛りになると、意識せずとも、
本能的に涼しい場所を求めてしまうためか、
オンネトー周辺、阿寒湖畔、阿寒川沿いなど、
水辺の森へ撮影に出かけることが多くなります。

阿寒湖周辺の森の多くは、
エゾマツやトドマツなど、針葉樹が中心ですが、
湖畔や川沿いなど太陽の光が射し込みやすい場所で、
主導権を握っているのは、針葉樹よりも広葉樹です。

水辺に生える木と言えば、
まず思い浮かぶのが、ヤナギの木。
お堀沿いや井戸のそばに必ずというほど生えてます。
幽霊が「うらめしや〜」と出てくるのも、
ブナよりヤナギの木の方が似合いますよね(笑)。

あまり関係ありませんが、平安時代の昔、
書の達人中の達人「三蹟(さんせき)」のひとり、
小野道風(おののみちかぜ)には、
ヤナギの葉っぱに飛びつくべく、
何度も何度もジャンプを繰り返すカエルの姿を見て、
努力の大切さを悟った、という逸話が……。

ヤナギ、というと、葉っぱが垂れ下がった、
シダレヤナギをイメージする方が多いかもしれませんが、
葉っぱが垂れてないヤナギもたくさんあります。

そして、その、ヤナギの木に生えるきのこと言えば、
ヌメリスギタケモドキ、別名ヤナギタケ、です。
(ヤナギ以外の広葉樹でも発生します)

やや粘性があり三角形の鱗片を持つ黄色い傘は、
乾いてくると、てかてかと鈍く輝きます。
それを支える、ずんぐりとした柄も乙なもの。
とても愛嬌のある形をしています。

多少気になる「臭み」のようなものがありますが、
茹でこぼせば、全然問題なし。
さっと大根おろしをかけて食べるもよし、
汁物の具にしてもよし、です。

ただ、ヌメリスギタケモドキには、虫が……。
ちょっと成長した個体のヒダの間には、
小さい甲虫系からハサミムシまで、
さまざまな種類の虫がたくさん潜り込んでいます。
動物性たんぱく質の同時摂取を望まないなら、
水に浸すなど、十分な虫対策をお忘れなく。

あ、最後に。
前述した、書道の大御所「三蹟」の、
残りの二人は、藤原佐理と、藤原行成。
「サリーちゃん(佐理)が
 豆腐(東風)を買うぜい(行成)」
と覚えましょう(笑)。
ここ、日本史の試験に出ます!

※このコンテンツでは、 きのこの食毒に触れてますが、 実際に食べられるかどうかを判断する場合には、 必ず専門家にご相談ください。
 
感想をおくる とじる ツイートする