季節は、晩秋、または初冬。
彼女と並んで歩いている、学校の帰り道。
太陽は西の空を赤く染めながら住宅地の向うに沈みつつあり、
冷気を含んだ風が、そよ、と通り過ぎます。
ふと、気づくと、雪がちらほら。
「初雪だ!」と、言葉にしようと思った瞬間、
それが雪虫であることに気づきます。
学生服の胸に舞い降りた雪虫を手で払おうとすると、
「あ、待って」という彼女の言葉。
「雪虫をこすると白く残っちゃうよ……」
ああ、北国の青春!
松山千春の歌が似合いそう(笑)。
北海道で言う「雪虫」とは、アブラムシの仲間で、
よく目にするのは、トドノネオオワタムシと言い、
晩秋、あるいは初冬の、風物詩。
小さな身体に白いふわふわ物質をまとって、
風になびくように、か弱く飛ぶので、
まるで雪が降っているように見えるのです。
雪虫が飛ぶと、1週間後に、
本当の雪が降ると言われてますが、
かつて、気象予報会社が道内各地で調べたところ、
雪虫を見てから雪が降るまでの期間は、
平均すると21日だったとか……。
温暖化が影響して遅れているとの説もあるようですが。
この雪虫が飛ぶ目的というのが、
トドマツから産卵場所のヤチダモへ移動するため。
第二世代目が卵からかえると、またトドマツへ移動、
というようなライフサイクルを送ります。
(実際の生活史は、もっともっと複雑)
トドマツは、北海道の森林面積の約半分を占める、
北海道を代表する樹木です。
(いわゆる「北海道の木」は、エゾマツですが)
阿寒湖周辺の森で、いちばん多く見られる樹木も、
もちろん、トドマツです。
阿寒湖がある釧路市と、お隣の足寄町の境界に、
フップシ岳という山があるのですが「フップシ」とは、
トドマツが生い茂る、という意味のアイヌ語です。
確かに、山麓から山頂まで、山全体をおおうように、
トドマツがびっしり生えています。
かつて、北海道大学が調査したところ、
阿寒国立公園内でいちばん多くきのこが見られたのが、
トドマツを中心にした森でした。
そんな、きのこたくさんのトドマツの森で、
個人的に、見つけて小躍りするほど嬉しいのが、
モミタケ、そして、この写真の、オオモミタケです。
(オオモミタケは、大きめで、黒っぽくて、ツバが二重)
マツタケ!が見つかる場合もありますが、
まあ、それは、例外中の例外(笑)。
肉がぎゅ〜っと詰まっていて、
成長すると傘の直径が30cm近くにも。
実に魅力的な、大型きのこです。
幼菌のときから、存在感抜群で、
マツタケと同じく、引っこ抜いた時の触感たるや、
これが、本当に、たまらないんです。
すっぽん、と抜けるんですよ、すっぽん、と!
どの図鑑を見ても、食べられる、
と書いてあるオオモミタケですが、お味が……。
食感はマツタケに似て、素晴らしいのですが、
ちょっと独特の臭みや酸味がある、というか、
ぼくにとっては、好きになれない味なんです(涙)。
水に長時間浸したり、加熱したりと、
いろいろ下ごしらえをしてみたのですが……。
食べるときには、できるだけ濃い味付けにして、
主に食感を楽しむ方向がいいかもしれません。
阿寒の森にオオモミタケが発生するようになると、
雪虫が飛び始めるのも時間の問題です。 |