食毒不明。疑わしきは食せず。
クサハツ 毒
写真と文章/新井文彦

たまに、これでもか!これでもか!
と、悪い出来事が重なったりしますな。

楽しみにしていた青森の毛豆が、
夏の天候不順で不作のため発送不可に!
知人を空港まで送り届けた帰り道、
突然飛び出してきた鹿と激突して車が破損!
翌日、60km離れたラーメン屋さんへ行くも、
なんとびっくり、臨時休業!
その夜、流星群と星空の撮影をしたら、
レンズの不具合で光が漏れていて写真データ全滅!
などなど。

泣きっ面に蜂。
踏んだり蹴ったり。
弱り目にたたり目。

この秋、24時間以内に、
こんなことが重なった人を知ってます……。

ぼくです……(涙)。

でも、こういう時には、
運がいいとか悪いとか考えるのではなく、
起きてしまったことは仕方ないじゃん、
と、開き直ってしまうのがいちばん。
温かい飲み物もしくはおいしいお酒で心を落ち着かせ、
あとは、布団に潜り込んで目を閉じちゃう。

目を覚ましたら、すっきり深呼吸。
いい方向へ転がるきっかけなんて、
明るい太陽の下、そこここに落ちているものさ!

そこで、クサハツです(笑)。
え(笑)?
強引とも言える、ものすごく唐突な展開!

クサハツは、夏から秋にかけて、
針葉樹、広葉樹、お構いなしで発生します。
黄色と橙を混ぜて褐色を足したような色の傘には、
はっきりとした、粒状の線が見られ、
柄は白く、中がぎっしり詰まっているもの、
あるいは、中空のもの、さまざま。
大きなものでは、傘の直径が15cmにもなります。

漢字で書くと「草初」ではなく「臭初」。
つまり、すごく、臭いんです。
腐った油の匂いが鼻にツンと来て喉でも大暴れ!
個体差はあるものの、総じて、不快な匂いがします。
おまけに、味はものすごく辛く、
胃腸系の中毒を引き起こす毒成分も含有。
なかなかのツワモノです。

で。
気分が落ち込んでいても、習慣的に、森へ。
クサハツを見つけ、臭いのはわかっているけど、
何となく、反射的に、匂いを嗅いでしまいます……。

その時、予想に反して、
いい香りがしたらどうでしょう?
クサハツが、臭くないどころか、爽やかな香り!
アンビリーバボー!何たる奇跡!何たる幸運!
きっと、これから、いいことがあるに違いない!
単純な人間は、これだけで救われた気になります(笑)。

後から知るに、あまり臭くないクサハツって、
実は、クサハツモドキのことだったんですけどね……。
(形はほとんどそっくりです)
そうやって、きのこ写真家は、
近年まれに見る精神的大ピンチを、
まんまと乗り切ってしまった、というわけ。

皆さん、精神的にツライ時には、
森へきのこを見に行くのも、
立ち直るきっかけになるかもしれませんよ!
ファイト!

※このコンテンツでは、 きのこの食毒に触れてますが、 実際に食べられるかどうかを判断する場合には、 必ず専門家にご相談ください。
 
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