食毒不明。疑わしきは食せず。
モリノカレバタケ 毒
写真と文章/新井文彦

きのこを探しに森へ出かけたら、
倒木をチェックしないわけにはいきません。
ぱっと見て地衣類やコケが生えているようであれば、
きのこが見つかる可能性も非常に高いと言えます。

上半分がびっしりコケに覆われた、
ひと抱えもある大きなトドマツの倒木に、
とりゃあ!とりゃあ!と賑やかに群生している、
モリノカレバタケを発見。

「C'est une chanson, qui nous ressemble」

と、ついつい、反射的に、あの、
イヴ・モンタンが歌ったシャンソンの名曲を、
口ずさんでしまいます……。
あ、すみません、嘘です(笑)。

「枯葉よ〜、枯葉よ〜」

と、口から出るのは、もちろん、日本語!
しかも、サビの部分しか知らないし、
悲しい歌なので何回もリピートして歌えません(笑)。

で、ええと、そう、
モリノカレバタケは、落葉分解菌です。
主に落葉を分解するために、普通は、
土壌(の落葉)から生えているので、
倒木の上で見られるのは珍しいかもしれません。
ま、太くて大きい上に、コケが受け皿となり、
たくさんの落葉が降り積もるでしょうから、
きのこにしてみれば、土壌も同然なんでしょう。

クリーム色〜黄土色系の傘は、直径が1〜4cmくらい。
フェアリーリングと呼ばれる菌輪を形成することが多く、
おまけに群生するので、すごく目立つきのこです。
夏から秋にかけてのけっこう長い期間、
針葉樹、広葉樹の森を問わず発生します。

さて。
クイズの答えを「食べられない」としましたが、実は、
増補改訂新版『日本のきのこ』『北海道のキノコ』など、
ぼくがいつも使っている、4つのきのこ図鑑は、
いずれも「可食」の扱いなんです!

ところが『日本の毒きのこ』という図鑑のみ、
毒成分は不明ながら、胃腸系の中毒を起こす、
と、毒きのこ扱い。
「モリノカレバタケの仲間は、
 小型で特徴に乏しいために十分な調査がなされてない」
との記述もあります。

と、いうことで、
危うきは食せず、が基本胞子、もとい、
基本方針の「きのこの話」といたしましては、
慎重を期すために、モリノカレバタケは、
毒きのこ、とみなします、はい。

それにしても、死してなお、森に活力を与え続ける、
木々の存在感たるや、感動的ですらありますな。
「枯木も山の賑わい」
などと揶揄するようなことわざもありますが、
ぼくは、枯木も、枯葉も、森の宝だと思ってます。

※このコンテンツでは、 きのこの食毒に触れてますが、 実際に食べられるかどうかを判断する場合には、 必ず専門家にご相談ください。
 
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