食毒不明。疑わしきは食せず。
ナカグロモリノカサ 毒
写真と文章/新井文彦

爽やかな風がそよと吹き抜けます。
川のせせらぎが優しく耳を刺激します。
少し湿った森の香りが鼻腔をくすぐります。
森はいいなあ……。
ほっ……。

しか〜し。
プ〜ン、プ〜〜ン、
と、すぐに耳元を不快な音がかすめ、
露出した指先に不快な刺激を感じます。
ぐぬぬ!くそう、やぶ蚊め!!
でっかいどう、北海道のやぶ蚊は、
ほんと、びっくりするくらい大きいんです!
チュウチュウ血を吸いやがります。

森では、他にも、
ヌカカに、ブユに、アブに、ダニなどなど、
動物の生き血をすする昆虫系が、アメ、アラレ。
重い撮影機材を持って森をうろうろしているので、
呼吸は荒いし、体温は高いし、汗をかいているし、
夜は毎日お酒飲んでいるし、血液型はO型だし(笑)、
ぼくは飢えたオオカミの群れに紛れ込んだ羊のように、
吸血昆虫の食欲?を刺激してるんでしょうねえ……。

いつも言っていることですけど、森は、
爽やかで気持ちがいいことばかりじゃないんです、はい。
でも、でも、でも、
通い続けてしまう魅力があるんです。
吸血昆虫にボコボコにされてなお耐えられる何かが……。

さて。
写真の中央に鎮座するは、ナカグロモリノカサです。
真ん中が黒い森の笠のようなきのこ=中黒森笠。
名前そのまんまですね。

阿寒周辺では、針葉樹林、広葉樹林を問わず、
いろいろな場所で、夏から秋にかけて発生します。
傘裏のヒダは、最初白いのですが、時間とともに、
淡いピンク色、さらに暗紫色へと変化します。
胞子の色が変わるのでヒダの色も違って見えるわけです。

写真では、柄のツバが暗茶色ですが、これは、
通常は白いツバに、色がついた胞子が落ちたから。
胞子が真下に落ちるなんて、しばらくの間、
風がすごくおだやかだったんでしょうねえ……。

雨が降ったりすると傘がやや赤っぽくなったり、
柄の根っこ近くの部分は、触ると黄色になるなど、
ヒダも含めて、色の変化があるきのこです。
ヨードホルム臭がする、と図鑑にはありますが、
写真に写したこの個体は、あまり匂いませんでした。

食べると腹痛や下痢など胃腸系の中毒を引き起こします。
まあ、死ぬほどの毒ではないようですが、
どうぞ、ご注意のほどを……。

ぼくは、森へ行くときには、真夏でも、
レインウエアを着て、長靴をはき、
時には防虫ネットをかぶったりしているので、
サウナに入ったくらいの大汗をかくのが常。
虫も不快ですけど、暑さにもぐったりなんです。

で、やけになって、
虫に刺されてもいいから薄着で森へ行くのだ!
と、Tシャツにハーフパンツという格好で森へ行き、
吸血昆虫の集中砲火を浴びてボッコボコにされて、
泣きながら街へ戻って、2、3日全身の痒みが収まらず、
ものすごく後悔する、という愚を、
年に1回か2回くらい、繰り返しております……(涙)。

※このコンテンツでは、 きのこの食毒に触れてますが、 実際に食べられるかどうかを判断する場合には、 必ず専門家にご相談ください。
 
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