おしい!食べられるんです!
ノボリリュウタケ 食
写真と文章/新井文彦

関羽雲長。
ぼくの大好きな歴史小説『三国志』に登場する、
説明の必要もないほど有名な武将です。

え!関羽を知らないって?
え!そもそも『三国志』を読んでないって?

面白い本を見つけ出す超能力を持ち、
日本冒険小説協会会長にして、
面白本のオススメ家・内藤陳をして、
面白小説No.1と言わしめた、吉川英治の『三国志』。
超長いけど、ほんと、超面白いです!
読まずには死ねません。

で、ええと、その、関羽雲長とは、
蜀の創始者である劉備玄徳の義弟です。
人並み外れた武勇、義理を重んじる人物像は、
多くの同時代人から絶賛されたのでありました。
熟したナツメの実!のような紅顔で、
身の丈9尺(216cm)、ヒゲの長さ2尺(48cm)。
青龍偃月刀(せいりゅうえんげつとう)と呼ばれる、
刃の部分に青龍の装飾がある大薙刀(なぎなた)で、
敵をばったばったとなぎ倒す、と。

それから……。

あ、久々に、暴走モードへ突入しそうな予感(笑)!
これでもかと『三国志』を礼賛したあと、
青龍、そして四神(しじん)を経て、龍の話へと流れ、
そこから、昇り龍へとたどり着くまでには、
この先、相当な文字数を必要としそうです……。
収拾がつかなくなる前に、きのこの話へ戻します。
いつもながら、すみません。

そう、今回の主人公は、
その名も、ノボリリュウタケです。
それにしても、命名者は、
このきのこの、何をどう見て、
昇り龍、という名前をつけたのでしょう?
いや、非難ではなく、
その想像力に感服しているんです、はい。

ノボリリュウタケは、子嚢菌のきのこ。
馬の鞍形とよく言われるのですが、そんな形をしていて、
(英語では「妖精の鞍」と呼ばれています)
周縁部が波打ったり切れ込んだりしている頭部と、
つるつるの表面を割くように多数の深い縦溝を持つ柄、
この二つのパーツが、実に特徴的です。

あ、そうか!
頭部が雲で、柄が龍だと見なすと、
天に向って上昇する龍の勇猛果敢な姿!
に、見えないことはないかもしれない……(笑)。

そうそう、以前ご紹介した、
マルミノノボリリュウタケも同じ仲間です。

北海道では夏から秋にかけて、
針葉樹林、広葉樹林問わず、地上から発生します。
が、まれに、春に見られることも。
他のきのことは容易に区別できるので、
そういう意味では、ちょっとだけ安心して、
採取することができると言えましょう。

味は、癖がなく、素直で、温和。
(要するにあんまり味がないってことです)
しこしこ、しゃきしゃきとした歯ざわりがグッド。
ぼくは味噌汁の具にして食べたのですが、
各種図鑑には西洋風の料理に合う、とあります。

この、ノボリリュウタケから、
ジロミトリンという毒成分が検出されたとの話が!

でも、でも、ご安心。
検出された量はごく微量のようですし、
ジロミトリンは、とても熱に弱く、
10分間の煮沸で毒成分の99%以上が抽出されます。
ですから、食用にするときには、
たくさん食べないこと、生では食べないこと、
この二つを厳守してください。

そうそう、先ほど、原稿を書きながら、
関羽の顔ってどんなだったんだろう?
と、ふと、疑問に思ったので、
「関羽雲長」で画像検索してみたら、さあ大変。
確かに、青龍偃月刀は持っているんですけど……。
良い子は見ちゃダメよん(笑)。

※このコンテンツでは、 きのこの食毒に触れてますが、 実際に食べられるかどうかを判断する場合には、 必ず専門家にご相談ください。
 
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