オオホウライタケ 食不適
写真と文章/新井文彦

いやいや、何と言うか、
きのこの「裏側」がまたいいんです……。
見ていて、飽きません。

森で、いわゆる美人きのこを見つけたら、
まず、全体像をしみじみ鑑賞したうえで、
森の木々や小川や空など周りの自然との調和を楽しみ、
それから、個々のパーツに視線を注ぐ、と。
匂いを嗅いだり触ったりするのは、まだまだ後です。

大切なことは、
見つけて即、きのこを採取しないこと。
きのこ経験が浅い人は、ここが我慢のしどころ。
ふう、はあ、と、ひとつふたつ深呼吸をして、
はやる気持ちを落ち着けましょう。

真上や正面から、十分に鑑賞したら、
いよいよ傘の裏へと視線を移していきます。
多くの場合、きのこは、
自分より相当低い位置に生えていますから、
座る、腹ばいになるは、当たり前。
時には、頬を大地にこすりつけなければ、
見ることができない場合もあるでしょう。

そうして、そこまでして、
苦労に苦労してのぞき込んだ傘の裏側です。
ぜひゆっくりじっくりご堪能いただきたく存じます。

と、まあ、相変わらず、
おバカな話を展開しておりますが(笑)、
きのこの種類を同定する場合においても、
傘の裏側の情報は、本当に、すごく重要です。

イグチ系のきのこであれば、
スポンジのような管孔状になってますし、
ハリタケ系であれば針が垂れ下がったような形状。
普通にヒダを持っているきのこでも、
そのヒダが、密生しているか、まばらか、
また、小さなヒダが見られるとか、分岐しているとか、
ヒダが柄に対して直角につながっている、
柄と傘の接点で接触している、
などなど、
とにかく、傘の裏側ひとつとっても、
さまざまな色や形状があるんです、はい。

で、改めて、今回ご紹介する、
オオホウライタケの写真をじっくりご覧あれ。
傘の裏側、きれいでしょ?美しいでしょ?
傘を透過する光で濃淡を帯び、
まばらな間隔で傘と柄の丁度接点まで伸びたヒダ。
ほら、端の方には、小さなヒダも見られます。
うっとり……。

傘の直径は、4〜10cmくらいで、
かつてご紹介したアシグロホウライタケなど、
小型のきのこが集うホウライタケの仲間としては、
けっこう大型の部類に入ります。
表面は、中心がやや濃い目の薄い茶褐色。
中心から外周に向って放射状の条線が見られ、
肉は薄いけれども、皮のような弾力があります。
柄は、細く固く、中身がぎっしり詰まった感じです。

食べてもおいしくないだろうことは、
想像に難くありません。
もちろん、どの図鑑を見ても、食不適です。

写真のいちばん奥は、
雄阿寒岳山麓に位置する阿寒湖の兄弟湖・太郎湖。
阿寒湖から勢いよく流れ出した水は、
太郎湖を経由してその先で小さな滝になり、
阿寒川として、一路太平洋を目指します。

※このコンテンツでは、 きのこの食毒に触れてますが、 実際に食べられるかどうかを判断する場合には、 必ず専門家にご相談ください。
 
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