ワタカラカサタケ 食不適
写真と文章/新井文彦

きのこは、地面から生えていたり、
立木、あるいは、倒木から生えていたりと、
いろいろな場所から発生するので、
森へ行くと、落ち着きのない人のように、
常に周囲をきょろきょろ見渡すことになります。

きのこを見つけたら、いろいろな角度から眺め回して、
写真を撮影するかどうか判断するのですが、
ぼくにとっての「良いきのこ」は、
美しいとか、珍しいとか、おいしいとか関係なしに、
写真を撮る前、あるいは、撮影した後、
その場に留まる時間が長いきのこ、かな。
良いきのこには、人を惹きつける何かがあるのだ。

ワタカラカサタケは、地面から発生する腐生菌。
葉っぱを分解して養分にしているわけですな。
ここ北海道の阿寒湖周辺では、夏から秋にかけて、
広葉樹が生えている森で見かけます。

傘は最初フェルト状なのですが、成長するにつれ、
表皮が細かく裂けたり、ひび割れたりして、
柔らかいツブツブ状の鱗片が現れます。
柄は、下へ行くほど太くなり、中はすかすか。
傘と同じく、綿くずのような鱗片に覆われています。

食べられる、とする文献もあるようですが、
基本的には食不適、食べる価値なし、です。
(なんか、突き放すような言い方だなあ……)

地面から生えているきのこを撮影する場合、
カメラを小さな三脚に付け替えたり、
あるいは、直接地面に置いたりするため、
多くの場合、腹ばいになります。

地面に頬をぐいぐい押し付けて撮影していて、
ふと気づくと、顔や腕が、ちくちくする……。
あまりに痛いのでようやく我に返ると、
そこはなんとアリの巣の上で、アリに攻撃されていた、
なんてことがあったりも……。
いてててて。

ま、たまにそんなことがあったりしますが、
皆さんも、森へ行く機会があったら、
ぜひぜひ、寝転がって、肘枕でもして、
もし、きのこがいたら、会話を楽しみつつ(笑)、
ふわ〜っと辺りを見渡してみてください。
寝転がって見る森の姿は、すごく新鮮ですから。
立つ、しゃがむ、寝転ぶ、
と、わずか2m弱くらいの視線移動なのに、
びっくりするほど違った雰囲気が味わえます。
(もちろん、汚れてもいい服装でどうぞ!)

上だけではなく、地面を見るのもお忘れなく。
今まで知らなかった、別世界とも言うべき、
小さな世界が存在していることに、
これまた感動すること間違いなし、です。

ただし、遊歩道などが整備されていて、
他の人がやってくる可能性がある場所では要注意。
森で腹ばいになって、きのこに話しかけてる、
なんてところを人に見られようものなら……(笑)。

※このコンテンツでは、 きのこの食毒に触れてますが、 実際に食べられるかどうかを判断する場合には、 必ず専門家にご相談ください。
 
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