おしい!食べられるんです!
シモフリヌメリガサ 食
写真と文章/新井文彦

シモフリヌメリガサ。
霜が降る季節に発生する傘がぬめぬめしたきのこ。
すごくわかりやすいネーミングですな。

ここ阿寒湖では、10月の声を聞けば、
いつ霜が降りてもおかしくありませんが、
ま、だいたい、そのくらいの時期に、
トドマツなど針葉樹の森で見られるきのこです。
(群生することが多いとか)

傘の直径は、大きなものでも5cmくらい。
中央の黒い部分がやや突起していますが、
ここは、傘が平らに開くにつれ陥没していきます。
柄は、上部にあるツバの名残くらいから下が、
ささくれだっていて、下方がやや細くなる感じです。

シモフリヌメリガサのさらに小型版がフユヤマタケで、
ほぼ同じような特徴を持っています。

お味、食感、ともによし。
ちょっと小さいのが玉に瑕ですが、
ぬめりを生かしてのお料理がよろしいかと。
さっと湯がいて大根おろしでいただくとか、
お味噌汁の具にするのが乙ですな。

阿寒湖周辺では、この写真のように、
コケの間から発生していることが多いように思えます。
コケから発生しているきのこ……。
実に絵になります。

まあ、この場所そのものが、すごくいいんですよね。
トドマツの森のある一画だけ、ぽかりと空間が空き、
狭い分だけ中味がぎゅっと詰まっているというか……。
ふっかふかのコケコケ感ばかりではなく、
シダシダ感、地衣地衣感もたまりません(笑)。
人工的に作ろうと思ってもなかなかこういきません。

いちばん端っこに腰を下ろして、
名だたる庭園に少しも引けを取らないであろう、
こんな空間を好きなだけじ〜っと眺める幸せ。
(しかもこの場所を知っている人はほとんどいない)
ああ、阿寒できのこ写真を撮っていて良かった!
と思える瞬間です。

このシモフリヌメリガサは、
おそらく菌根菌(きんこんきん)ではないかと。
菌根菌とは、土壌中の糸状菌が、
植物の根の表面や内部に着生したもの=菌根をつくって、
植物と共生している菌類のことです。
よく知られているのは、
マツの仲間の菌根菌のマツタケ、
シラカバの仲間の菌根菌のベニテングタケなど。

で、シモフリヌメリガサが、針葉樹の森で見られる、
ということは針葉樹の菌根菌ということであり、
もしかしたら、すぐ後ろに見えているトドマツの幼木と、
すでに地面の下でしっかりと「手」を握り合って、
共生関係をつくりあげているのかもしれません。

ぼ〜っとして、
そんな地中のことをつらつら考えながら日々を過ごすと、
自分の黒髪に霜が降りたのにも気づかず、
いつの間にか年齢ばかりを重ねて……。

本当は恐ろしいきのこ観察!
皆さまも熱中のし過ぎにはご注意のほどを。

※このコンテンツでは、 きのこの食毒に触れてますが、 実際に食べられるかどうかを判断する場合には、 必ず専門家にご相談ください。
 
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