不正解、食べられます!
ヌメリスギタケ 食
写真と文章/新井文彦
じゃじゃ〜ん。
ヌメリスギタケ(幼菌)です。
何とまあ、愛らしく、キュートなお姿。
何かに似ていませんか?

ぼくは、このきのこを見つけたとき、
カワウソがいる!
カワウソの子どもだ!
と、思わず叫んでしまいました。

想像してみてください。

ツートンカラーの境目の真ん中に、
ちょっとおっさんぽい鼻をで〜んとつけて、
同じライン上の両側に、
まんまるでちょっと吊り上がった目を配置。
さらに耳を加えれば、はい、完成。
カワウソでしょ(笑)?

ニホンカワウソは、北海道から九州まで、
広く日本に生息していましたが、
極めて保温力が高い毛皮目的の乱獲をはじめ、
水質悪化、護岸工事、周辺開発などにより数が激減。
残念ながら、2012年に絶滅種に指定されました。

さて。
ヌメリスギタケは、
以前ご紹介した、ヌメリスギタケモドキの、
いわば、本家本元、と言えましょう。
モドキ、ではないわけですから(笑)。

夏から秋、主に広葉樹の枯れ木から発生。
「ぬめり」という名前の通り、
粘性を帯びていて、湿時は、ぬめぬめです。
傘の色はやや黄色味がかった茶褐色系で、
大きなものは、開いたとき、直径10cmくらいに。

傘にも、柄にも、多数の鱗片が。
そう、幼菌時の鱗片は、写真のように、
傘の中心部は傘と同じような色で、
周縁部へいくにつれ白みを帯びています。

個人的な感想ですが、成長するにつれ、
キュートさと愛らしさが急激に失われ、
普通のきのこ!になっちゃうんです(笑)。

ぬめりがあってつるりとした舌触り、
噛めば実に歯切れがよく、お味もグッド。
そう、ヌメリスギタケは、分類的にも、
食菌の王様とも言うべきナメコの近縁なんです。

やや群生するものの、
一度にたくさん採れるきのこではないので、
見つけて、食すときには、
しみじみとそのお味を堪能したいもの。

さっとゆでて、おろし和えなんかいいですな。
味噌汁、鍋に入れても絶品です。

それにしても、ニホンカワウソ……。
どこでもいいから、日本の片隅で、
ひっそりと生きていてくれるといいですねえ……。
密かに、ヌメリスギタケを、カワウソタケと呼んで、
ニホンカワウソとまた会える日を待ちたいと存じます。

※このコンテンツでは、 きのこの食毒に触れてますが、 実際に食べられるかどうかを判断する場合には、 必ず専門家にご相談ください。
 
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