ムラサキシメジでございます。
何といいますか、実に品のいい色をしておりますな。
かつてご紹介した、
ムラサキフウセンタケが「violet」だとするなら、
ムラサキシメジは「purple」。
ムラサキフウセンタケが「江戸紫」だとするならば、
ムラサキシメジは「京紫」。
ぼくにとっては、なんとなく、そんなイメージです。
昔から、紫色は、高貴な色とされていました。
源氏物語の、紫の上。
源氏物語の作者の、紫式部。
ガラスの仮面の、紫のバラの人……。
ぼくがぱっと思いつく「紫」がつく人は、
何となく高貴で、ちょっとミステリアスな感じが(笑)。
さて、ムラサキシメジは、
秋遅く、主に広葉樹の森に発生します。
枯木とか倒木などの木から生えるのではなく、
「地面」に生えているきのこにも関わらず、
その正体は、菌根菌ではありません。
ムラサキシメジは落葉を分解しているんです。
分解ターゲットが地面上の落葉だからか、
人差し指でつんつん、と押してみると、
ちょっと頼りないくらいに、グラグラします。
美しい紫色をした傘の直径は4〜10cmくらい。
柄は繊維質で、下部がぷっくり膨れていて、
中実なので弾力があります。
歯ごたえがよく、味もいい、
と書いてある本も多いのですが、
けっこう土臭い味がすることも……。
こういう時、頼りになるのが、
山と渓谷社の改訂新版『日本のきのこ』。
ムラサキシメジのページを見てみますと、
ありました、ありました。
「垢臭い味がするときは、ごま油で炒めるとよい」
だそうです(笑)。
生で食べるとお腹をこわすので要注意。
食べられるうえに、美しいムラサキシメジには、
何を隠そう、実は、重大な問題がありまして……。
時間が経つと、色があせてくるんです。
愛用図鑑『北海道のキノコ』は、ひどい書きよう。
「傘が開くにつれ、汚黄色から汚褐色に……」
黄色や褐色ではなく、汚黄色に汚褐色って(笑)!
ぼくは、人も、きのこも、
若かろうが、老いようが、
あるがまま、自然のままの姿が、
十分に美しいと思います。
「退色が怖くてきのこやってられっか!」
というムラサキシメジの心の声が、
皆さまには聞こえますでしょうか? |