ハリガネオチバタケ 食不適
写真と文章/新井文彦

ぼくは、阿寒湖周辺に、
自分の森をいくつも持っているので、
初夏から晩秋の「きのこシーズン」中は、
ローテーションを組んで順番に見回っています。

自分の森、と言っても、もちろん、
所有しているわけではありません(笑)。
ややエリアの広い定期観察地点のことです。

何年も定期的に同じ場所へ通っていると、
きのこの情報はもちろん、森の自然に関する、
いろいろな情報が蓄積していくので、
基本データベースが年々充実していきます。
ぼくの持っている数少ない財産のひとつです。

阿寒湖周辺では、10月の声を聞くと、
紅葉がだんだん見頃になってきます。
先取りして紅葉を味わうにはあの場所へ!
ということで、阿寒川源流部の森へ。
ここには、毎年早い時期から真っ赤になる、
大きなヤマモミジの木があるんです。

その木を見下ろせる高台になっている所で、
「きのこ目」センサーが、ハリガネオチバタケを感知!
いや、これは、褐色タイプのハナオチバタケかも……。
あ、でも、やっぱり、おそらく、きっと、
ハリガネオチバタケだ(笑)!

同定に迷うのには訳がありまして、
ハナオチバタケの褐色バージョンと、
(実はピンク色バージョンもあるのです)
ハリガネオチバタケは、肉眼での同定が困難なほど、
とっても、似ているんです。

ランプシェードのような傘。
細くて固くて黒い柄。
7月から9月くらいにかけて、
針葉樹広葉樹を問わず、地面=落葉から発生。
(葉を分解するタイプのきのこなんです)
見た目も発生状況もほとんど一緒です。

傘裏のヒダの数で区別する、という説があるのですが、
ハナオチバタケは13〜15本内外、
ハリガネオチバタケは16本〜19本、
と書いてある図鑑がある一方で、
両方とも13〜19本、
という図鑑もあったりして、埒が明きません。

ところが、どの図鑑にも、
ハナオチバタケの傘の直径は、
0.8〜1.5cm、と出ているんです!
この写真のモデルさんの傘の直径は、およそ2cm。
これは、やっぱり、おそらく、きっと、
ハリガネオチバタケだと思うわけです、はい。

触ればわかりますけど、両者とも、小さくて、固くて、
食用に適したタイプのきのこではありません。
よって、食不適。

顕微鏡で胞子の形や大きさを見ることができれば、
おそらく確実に同定できると思うのですが、
まあ、ぼくは、研究者ではないので、
ハナオチバタケとハリガネオチバタケを間違っても、
まあ、それほど問題ないかと……。
(いつもながら適当ですみません)

ちなみに、この写真は、
ハリガネオチバタケの手前に穴を掘って、
そこにカメラを半分くらい押し込み、
腹ばいになって撮影しました(笑)。
なんせ、小さい小さいきのこですから。

10月初旬の阿寒湖周辺は、
紅葉もきのこも両方楽しめる、いい季節です。

※このコンテンツでは、 きのこの食毒に触れてますが、 実際に食べられるかどうかを判断する場合には、 必ず専門家にご相談ください。
 
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