コツブヒメヒガサヒトヨタケ 食不適
写真と文章/新井文彦

一般的に、きのこには秋のイメージがあります。
おそらく、マツタケとか、ホンシメジとか、
食通をうならせ、泣く子を黙らせる、
食菌の王様女王様的きのこが発生するのが、
いわゆる秋、だからでしょうか。
でも、きのこって、実は、
1年中発生しているんですけどねえ……。

夏に雨がたくさん降ると、秋にきのこがたくさん出ます。
夏が暑くて、一気に冷えて秋になると、
カエデなどの木々の葉がより鮮やかに紅葉します。
つまり、夏が暑く、かつ雨が多く、
暑さの戻りなどなく一気に冷えて秋になると、
きのこも、紅葉も、両方楽しめる秋になるわけですな。

きれいな紅葉が見られる条件は、
日中のお天気がいいこと、
昼夜の寒暖の差が大きいこと、
適度にお湿りがあること、
空気がきれいなこと、
そして、平地よりも斜面。

何がいいたいかおわかりですか(笑)?
そう、阿寒は、きのこ的に素晴らしいのはもちろん、
紅葉もそりゃあきれいなんです。
「日本紅葉の名所100選」にも選ばれております。
きのこと紅葉の組み合わせ、最高ですねえ。

と、いうことで、
紅葉真っ盛りの10月中旬頃、
阿寒川の渓流に沿って歩いていたら、
錦の布を織りなしたような色鮮やかな落葉の間に、
小さなかわいいきのこを発見!

最初はキララタケかと思ったのですが、
地面から直接生えているので、ちょっと違う?
ええと、じゃあ、多分、おそらく、
コツブヒメヒガサヒトヨタケ、かな……(笑)。
漢字で書くと「小粒姫日傘一夜茸」です。

実は、ヒメヒガサヒトヨタケってきのこがあって、
コツブヒメヒガサヒトヨタケとすごく似てるんです。
ほとんど肉眼では区別がつかないほどに。
胞子を顕微鏡で見ると、
コツブヒメヒガサヒトヨタケの方が小さいんです。
だから「小粒」って名前が付いているわけで。

顕微鏡で胞子を確認してもいないのに、
なぜコツブヒメヒガサヒトヨタケだと思ったかと言うと、
実は、いくつかの図鑑に、ヒメヒガサヒトヨタケは、
路傍や公園など「里」に多く見られるという記述が……。
つまり「里」ではない阿寒に生えているのだから、
コツブヒメヒガサヒトヨタケではないか、と。
いい加減な同定理由ですみません、はい。

傘の大きさは2cm弱。
卵形からだんだん扁平に開き、
やがて薄い紙のような雰囲気に。
胞子が熟成すると黒くなるため、
傘裏は徐々に黒っぽく変色していきます。
春から秋にかけての長きにわたり、
森の湿った地上から発生します。

まあ、こんな大きさだし、
こんな雰囲気なので、食不適。
食べるには値しません。

コツブヒメヒガサヒトヨタケは、
(ヒメヒガサヒトヨタケも同様に)
傘が開くと一夜にして液状化してしまうという、
ヒトヨタケの仲間なんですけど、
実は、ほとんど液状化しないんです。
どうしてなのかは、わかりません(笑)。

阿寒では、紅葉が最盛期になる頃、
冬の使者・雪虫がふわふわと飛び、
そうこう言っているうちに雌阿寒岳の山頂が白く薄化粧。
そしたらすぐに長く厳しい冬がやってきます。

※このコンテンツでは、 きのこの食毒に触れてますが、 実際に食べられるかどうかを判断する場合には、 必ず専門家にご相談ください。
 
感想をおくる とじる ツイートする