サビイロクビオレタケ(冬虫夏草) 食不適
写真と文章/新井文彦

きのこには、
生きている動植物などに取りつく寄生、
死んだ生物に取りつく腐生、
生きている木とお互いに栄養のやりとりをする共生と、
3通りの栄養摂取方法があります。

きのこが寄生すると木が枯れ、
「間引き」が行われて、森の活性化を促進。
倒木や落葉などの「生物遺体」を、
きのこなど菌類が分解することで各種元素が循環。
菌根をつくって樹木とつながり、森を育成。

そう考えると、きのこは、
実に偉大な、森のコーディネイターであり、
木の「子」どころか、木の「親」、森の親じゃん!
と言いたくなりますな。

今回ご紹介するきのこは、
冬虫夏草の、サビイロクビオレタケ。
生きた昆虫に寄生するきのこです。
主に、朽木の中のアブの幼虫から発生。
夏から秋にかけて見られます。

子実体はやや明るめの褐色で、高さは1cm前後。
小さいながらも案外目立つので、
慣れてくると簡単に見つけられるようになります。

横たわる細長い幼虫の体(多くはその先端部)から、
まっすぐ空を目指すがごとく伸び上がります。
これがくくくっと首が折れているように見えたのが、
名前の由来でしょうかねえ……。

すごく小さいし、見た目はアブの幼虫だし、
これを食べたいという人がいたら、
それはそれで尊敬します、はい(笑)。
もちろん、食不適です。

冬虫夏草と呼ばれるきのこが寄生する昆虫などを、
宿主(しゅくしゅ)と言います。
サビイロクビオレタケの宿主であるアブの幼虫は、
枯れた広葉樹の樹皮のすぐ下にいるので、
ナイフなどで剥がすように掘ってみると、
じゃじゃ〜んと、はい、簡単にご対面。

最近では、薬効があるとのことで、
冬虫夏草仲間のサナギタケの人工栽培が行われており、
謎の多い冬虫夏草の生態解明に、一役買っています。
それによると……。

宿主の体表に付着した胞子が発芽して菌糸になると、
じわじわと体内に侵入していきます。
菌糸は血管に入るとひとつひとつの細胞に千切れ、
かつ、それぞれが分裂を繰り返し、どんどん増殖。
増殖する時に「毒」を出すので、
宿主はじわじわと死へと追いやられるというわけ。
やがて、増殖した細胞が集まって再び菌糸を形成。
宿主のきのこ化完成、と相成ります。

冬虫夏草、何て恐ろしい子!

冬虫夏草は、種類によって宿主が決まっているので、
サナギタケや、サビイロクビオレタケが、
他の昆虫から発芽?することはありません。

冬人夏草なんてきのこがあったら、すごく怖いなあ……。
(人からきのこが発生した例も少数ながらあります!)
ぼくなんかすぐ寄生されちゃいそうだなあ……。
ふるぶる……。

※このコンテンツでは、 きのこの食毒に触れてますが、 実際に食べられるかどうかを判断する場合には、 必ず専門家にご相談ください。
 
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