コキララタケ 食不適
写真と文章/新井文彦

海や川の底などで、砂に混じって、
金色にきらきら輝く物体をよく見かけます。
子どもの頃、これを金だと思って、
たくさん集めようとしたことがありました。

でも、その金と思しきものは、
とっても小さくて、薄っぺらくて、
砂から選り分けるのが大変なうえ、
よくよく見ると透明だったり裏が黒かったりして、
結局、大量収集は諦めることに……。
子どもながらにこれは金じゃない!
と確信しました(笑)。

その物体が、雲母(きらら)であると知ったのは、
高校生になったくらいだったかなあ。

そして、さらに、数十年後!
きららと戯れていた少年は、おっさんとなって、
緑あふれる初夏の阿寒の森で、
きらら、と名がついたきのこと巡りあうわけです。
ああ、人生とは、まさしく、
自分が主人公の一遍の小説なんですねえ。
(何をわけのわからんことを……)

実は、キララタケとコキララタケは似ています。
いずれも、初夏から秋の初めにかけて、
広葉樹の倒木や切り株の上に発生。
その名前の由来にもなっている、
雲母状の鱗片が付着している淡黄褐色の傘の直径は、
(鱗片はさっさと消失してしまいます)
両者ともに、1〜4cmくらいです。

キララタケに付着する鱗片は砂粒っぽくて、
コキララタケの鱗片は粒がやや大きいという違いのほか、
写真ではちょっとわかりづらいのですが、
コキララタケの根本やその周辺には、
黄〜茶褐色で粗毛状の菌糸のカタマリが見られます。

まあ、このふたつのきのこを見分けるには、
顕微鏡で胞子の形を見るのが確実なんですけどね。

傘は、幼菌時、たまご型をしていますが、
だんだんと開いていきます。
とはいえ、他のきのこのように、
傘が反り返るまで開くわけではなく、
さらに、コキララタケに関して言うなら、
ヒトヨタケの仲間に見られるように、
一夜でどろどろと溶けることもありません。

コキララタケも、キララタケも、
食べられると書いてある図鑑があるのですが、
ともにヒトヨタケの仲間であり、
ヒトヨタケと言えば「酔っぱらい殺し」(笑)!
であることを、どうぞお忘れなく。
さらに、悪酔いするだけではなく、微量ながらも、
中枢神経系に作用する毒成分も検出されているとか。
食べない方が無難です、はい。

そうそう、雲母と言えば、
浮世絵には雲母摺(きらずり)という手法がありますね。

真一文字に結んだ口と睨みつけるような目、
描かれた上半身に比べ極めてデフォルメされた手……。

皆さんも目にしたことがあると思われる、
東洲斎写楽の大傑作中の大傑作、
「三代目大谷鬼次の江戸兵衛」がまさにそれ。
銀のような落ち着いた輝きが持ち味の背景には、
ニカワなどと混ぜた黒い雲母の粉末が使われており、
黒雲母摺(くろきらずり)と言われています。

そして、古今東西の浮世絵の中には、
立派な「きのこ」が描かれてるものも数知れず……。
あ、またまた下ネタになっちゃいましたね(笑)。
失礼いたしました……。

※このコンテンツでは、 きのこの食毒に触れてますが、 実際に食べられるかどうかを判断する場合には、 必ず専門家にご相談ください。
 
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