クロニガイグチ 食不適
写真と文章/新井文彦

ぼくは、前々から、いろいろなところで、
きのこ観察を続けていると「きのこ目」が強化され、
どんどんきのこが目に入るようになりますよ、
と言っているのですが、
実は「きのこ目」がもたらす弊害もあるわけで。

そう、きのこにばかり注目してしまうので、
きのこ以外のものへの反応が鈍くなっちゃうんです。
反応もそうですし、興味も。

それはそれで別に構わないのかもしれませんが、
筆舌に尽くしがたいほどの大自然に恵まれた、
阿寒の森をせっかく歩いているのに、
きのこばかり見ていたのでは、
なんか、もったいないじゃないですか!

例えば、この写真に写っている、
広大な森の中のほんのわずかなわずかな空間にも、
小宇宙と言っても過言ではないほどの、
精緻で複雑で美しい自然の営みがあるわけで。

欲張りなようですけど、森で目にするもの、
いや、五感で感じるありとあらゆるものに、
興味を持つことができたらいいなあ、と強く思います。
でも、まあ、一番の興味の対象は、
やはり、きのこなんですけど(笑)。

さてさて。
「きのこの話」の連載を始めてまもない頃に、
ウラグロニガイグチをご紹介しておりますが、
今回のきのこは、クロニガイグチ。
要は、裏が黒くないってことです(笑)。

クロニガイグチは、夏から秋にかけて、
トドマツやミズナラなどの樹下に発生します。
傘は黒〜褐色系で、ビロード状の滑らかな手触り。
細かくひび割れていることも多々あります。

イグチの仲間なので、傘の裏はヒダではなく管孔。
最初は灰色系なのですが成長するにつれ淡い赤色に。
傷つけたり触ったりするとすぐに赤黒く変色します。
柄は固くて網目があって、傘と似たような色です。

おそらく、食べても毒性はないと思われますが、
ニガイグチという名前がつけられているくらいなので、
きっとそれほどおいしくはないでしょう!
よって、食不適。

イグチ系の黒いきのこは、他にも、
ニガイグチモドキ、オオコゲチャイグチ、
コビチャニガイグチ、コゲチャイロガワリなどなど、
思いつくだけでもたくさんあるので、
しっかりと名前を同定しようと思ったら、
けっこう大変なんですよねえ、これが。
(見つけるのはこの上なく楽しい!!)

自然について少しでも知りたいと思うなら、
自然の中に身を置くのがいちばんです。
自然を感じるのは本やテレビやインターネット、
という、街暮らし、都会暮らしの皆さま、
ぜひ、実際の自然の中へ足をお運びください。
快適も不快もみんなひっくるめて、あるがままの、
「自然」を体感していただきたく存じます。

※このコンテンツでは、 きのこの食毒に触れてますが、 実際に食べられるかどうかを判断する場合には、 必ず専門家にご相談ください。
 
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