食毒不明。疑わしきは食せず。
サクラタケ 毒
写真と文章/新井文彦

鈍色の雲が低く厚く垂れ込める生憎のお天気。
でもでも、こういう日は、いくら真夏だと言っても、
気温があまり上がらず(さすが北海道東部!)、
虫除けに着ているレインウエアが苦痛にならないので、
通常の気温であれば間違いなくあきらめていた、
森の急斜面をぐいぐい登っちゃったりするわけです。
(でもやっぱり汗びっしょり!)

大粒の汗を顎から滴らせ、ぜいぜいと喘ぎながら、
倒木を乗り越えたり、くぐったり。
大型のシダをかき分け、マツの幼樹の脇をすり抜け、
鬱蒼とした、針葉樹の、森を、はあ、はあ、はあ、
奥へ、奥、へ、はあ、はあ、はあ、はあ……。

苔むした倒木に腰掛けて休憩。
水分補給しつつ、体が欲するだけ空気を吸入します。
はあ、はあ、はあ、はあ……。
ここ阿寒の森にあるのは、超一級、極上の空気(笑)。
値段が付けられないほどの価値って、
きっとこういうもののことを言うんでしょうねえ……。

呼吸が落ち着いてくると、
香りを気にする余裕がでてきます。
爽やかな若葉のような、湿った土のような、
いい香り、変な香りが、渾然一体となって、
最終的にはいい香りに軍配が上がる、森の香り。
生態系と同じく、複雑なことこの上ありません。
すう、はあ。

そして、どんなに疲れていても、
自家薬籠中の物になりつつある「きのこ目」は、
ぱっ、ぱっと、きのこを探し出します。
少し奥まった場所の地上近くにオレンジ色の物体発見!
(写真の真ん中あたりの上の方をご覧あれ)

マスタケの幼菌だ!
と思いつつ近づいていくと、足下に薄紫色のきのこ!
サクラタケです。

サクラタケは、初夏から晩秋に見られる、
傘の直径が2〜5cmくらいの小さなきのこ。
桜色をしているというよりは、
バラ色、薄紫色、薄紅色、藤色などなど、
紫系、ピンク系のバリエーションという感じで、
柄も傘とほとんど同じような色です。

群生することが多いので、
その気になればそこそこの収穫が期待できますが、
実は、毒きのこ!
従来は可食とされていたそうなんですけど、
食べない方が無難、というか、食べるのは止めましょう!

誤食すると、しばらくして、
発汗、流涎、下痢、嘔吐、腹痛、精神錯乱!など、
胃腸系、神経系の中毒症状が現れます。
ベニテングタケの含有成分で知られるムスカリン類や、
その他別の毒成分も含んでいるのだとか。

さてさて、
サクラタケの写真を思う存分撮影したから、
次は、マスタケの幼菌を……。
と、思ったら、
サクラタケの下あたりをよ〜くご覧あれ。
白い小さなきのこが生えているの、わかります?
(写真中央に横たわる倒木にもたくさん!)
これ、白っぽいような半透明のきのこ、
シロホウライタケなんですよ。

広角レンズからマクロレンズに付け替えて、
まずはシロホウライタケの撮影だ!
(やれやれ……)

※このコンテンツでは、 きのこの食毒に触れてますが、 実際に食べられるかどうかを判断する場合には、 必ず専門家にご相談ください。
 
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