イタチタケ
食不適
写真と文章/新井文彦

目の前にある、きのこも、森も、
見上げた空の向こうに広がる大宇宙も、
そして、ニンゲンも、柴犬も、すべて自然。
ニンゲンはあらゆる自然を観察することで、
知識をどんどん積み上げているわけですよねえ。
今までも、これからも。

つまり、どこかに存在している宇宙人は、
我々と同じ宇宙で暮らしていて、
我々と同じ宇宙を観察しているわけですから、
知識の体系もきっと我々と同じはず……。

だとすると、想像もつかないくらい遠くの星にも、
早朝、まだ薄暗い森で、川にじゃぶじゃぶ入って、
「きのこ」写真を撮っている「人」がいるかも(笑)。

などと、おバカなことを考えていると、
どんどん霧が晴れて太陽の光が射し込んできて、
シャッターチャンス到来!

大きなシナノキの倒木から生えているきのこは、
その名を、イタチタケ、と言います。

夏から秋に、広葉樹の倒木やその周辺に群生。
傘は灰褐色〜灰色系で直径は5cm前後、
表面はするりと滑らかで、幼菌時には、
周縁部に皮膜の破片がちらちら付いていることも。
傘裏のヒダは密集していて白色。
時間が経つと薄紅〜薄紫から紫褐色に変化します。

食べられると書いてある図鑑もありますが、
中枢神経系に作用することで知られている、
シロシビンという毒成分が検出されているので、
まあ、食べない方が無難でしょう。
味や香りや食感を考慮しても、
冒険してまで食べる価値はないようです。

それにしても、このきのこ、
なんでイタチタケという名前なんでしょう?
同じナヨタケ科に、ムササビタケ、ムジナタケもあって、
動物名御三家なんですけど(笑)、
他の2種も、なぜ、その動物の名前がついたのか、
まったくわかりません。
色かなあ……?

ちなみに、
北海道ではあまり馴染みのない、
葉っぱを持たない南方系の不思議な植物で、
イモネヤガラってのがあるんですけど、
(日本では鹿児島以南で見られます)
葉っぱがないから光合成ができないってんで、
生きる栄養を共生する菌類から貰ってるんです。
その、命の恩人ならぬ恩菌が、
イタチタケの仲間なんですよねえ。
偉いきのこでしょ。

そうそう、
2010年にアメリカで新種登録され話題になった、
水中で育つきのこもイタチタケと同じナヨタケ科です。
何でも冷たく澄んだ川の上流部を好むのだとか。
(阿寒川でも見つからないかなあ……)
きのこが属する菌類は、
想像以上に過酷な環境で生きているものもあるので、
案外、宇宙の至るところに仲間がいたりして……。
きのこって本当に興味深いなあ。

※このコンテンツでは、 きのこの食毒に触れてますが、 実際に食べられるかどうかを判断する場合には、 必ず専門家にご相談ください。
 
感想をおくる とじる ツイートする