不正解、食べられます!
ヌメリツバタケ
食
写真と文章/新井文彦

地面から生えている極小きのこを、
真正面から撮影したい!と思っても、
普通の一眼レフカメラを使っている場合、
カメラを三脚から外して地面へ直に置いたところで、
カメラボディやレンズが邪魔をして、
「上から目線」でしか撮れない場合が多々あります。

ある時、ふと思いついて以来、
ぼくのきのこ写真撮影の必需品になったもの。
それが「上から目線」撮影を解消してくれたのでした。
何だと思います?

この話はいろいろな場所でしているのですが、
その、極小きのこ撮影必需品とは……。

スコップです!

そう、きのこより低い位置にカメラをセットすべく、
スコップで穴を掘ってカメラを埋め込んじゃうんです。
(もちろん、穴は撮影後に埋め戻します!)
考えてみれば、とても単純な話ですな。

あ、そうそう、
この「スコップ」ってクセモノなんですよね。
スコップとシャベルの違いをご存知ですか?
大きいのがスコップで、小さいのがシャベル?
え?逆?大きいのがシャベルで、小さいのがスコップ?
う〜む……。

調べてみると、日本製の工業製品などには、
JIS規格なる国家標準が定められており、
シャベルとスコップの違いも表記されているんです!

答えは自分でおググりあそばせ。

と言いたいところですが(笑)、
今回は特別に答えをお教えしましょう!

JIS規格では、
足をかける部分があるものがショベル
(定義はシャベルではなくショベル)、
無い物がスコップとされているんです。
へえええええ。
つまり、JIS的なシャベルとスコップの違いは、
大きさではないということです。
だから混乱するんですよね。

ハナシが脱線しまくり!
今回ご紹介する、傘の裏のヒダが非常に美しい、
このヌメリツバタケの写真も、ヒダを写すべく、
穴を掘ってカメラを埋めて撮影したのかというと、
特にそんなことはなく、写してくれと言わんばかりに、
目の高さの倒木から発生しておりました(笑)。

適度な間隔があり、長短のバランスもよく、
中心から放射されたかのような絶妙の配置……。
これぞ、ヒダの中のヒダ。
ヒダの女王!
どんなに言葉を重ねようと形容しきれません。
きのこはヒダが命だと、つくづく思うのみ。
うっとり……。

そんな、ヒダの女王・ヌメリツバタケは、
春の終わりから秋にかけて広葉樹の生木や枯れ木に発生。
純白の傘はたっぷりの粘液でおおわれており、
柄の上部にはヒダを保護する膜の名残・ツバがあります。
ゆえに、ヌメリツバタケ、です。

おいしいという方もいれば、
薬品臭がして味はイマイチという方もいて、
情報は諸説混じっているのでありますが、
とりあえず、食べることができます。

きのこの本体は地下や樹木内に伸びる菌糸であり、
通常目にするいわゆるきのこ=子実体の役割は、
次の世代に子孫を残すことだとするならば、
子孫=胞子をつくって、かつ、放出するヒダは、
その、最も重要なパーツです。
「きのこはヒダが命」とぼくが力説するのも、
あながち誇張というわけではないんです、これが。

ちなみに、
ヌメリツバタケの登場は、これで2回目。
前回の記事はこちらをご覧ください。

※このコンテンツでは、 きのこの食毒に触れてますが、 実際に食べられるかどうかを判断する場合には、 必ず専門家にご相談ください。
 
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