ニガイグチ
食不適
写真と文章/新井文彦

きのこを意識してのイメージトレーニングを重ね、
「きのこ目」なるものを自家薬籠中の物とすれば、
街でも都会でもきのこを発見する確率は高くなります!
と、ぼくはいろいろなところで吹聴しています。

しかし、白状してしまうならば、ぼくは、
阿寒の森とは何もかも勝手が違う、
たとえば、新宿御苑や明治神宮など、
東京中心部の自然の中できのこを探すのは、
ちょっと、というか、すごく苦手です、はい。

「きのこ目」は、都会であっても、
ぴぴ!とけっこう頻繁に発動するのですが、
白いきのこだと思ったら紙くずだった、
粘菌(変形菌)だと思ったら鳥のフンだった、
なんて場合の方が明らかに多いんです……(涙)。
明らかに精度不足。
慣れの問題なのかなあ?

それはさておき、今回ご紹介する、
こんなかわいい形のきのことの出会いも、
もちろん、きのこ目から始まるわけで。

まず、
「あ、きのこだ!」
と、きのこ目が反応します。
「いや、違った、お菓子?」
「いやいや、お菓子のはずないべさ!」
「これ、きのこだよねえ……?」
「おお、きのこだ、ニガイグチだ!」

会話風にすると長くなりますが、
発見一報から極めて短い時間の間に、
脳内をこんな感じの思考が駆け巡ります。
きのこ目&きのこ思考(笑)。

このきのこを見つけたとき、
似ているなあ!と思ったお菓子は、
ご存知の方もいらっしゃるかと思いますが、
鈴カステラです。

ニガイグチは、夏から秋にかけて、
主に針葉樹林で見られます。
傘は、淡い褐色〜淡い黄色で、滑らかな感じ。
イグチの仲間に特徴的なスポンジ状の管孔は、
白〜淡い紅色で傷をつけるとやや褐色に変化します。
柄は、傘とほぼ同じ色をしていて、
この写真ではわかりづらいのですが、見ると、
中程から上部にかけて網目模様が入っています。

その名前の通り、食べると、
思いっきり苦いのだとか。
毒はないようなのですが、もし、見つけても、
ゆめゆめ食べるべからず。

やや紅味を帯びていて広葉樹林に発生する、
ニガイグチモドキの方が、このニガイグチよりも、
一般的にはよく見つかるらしいです。

ちなみに、都会に限らず、
人がいる場所でのきのこ撮りって、
実は、すご〜く、大変なんです。

通りがかる人々の好奇の視線に耐えつつ、
腹ばいになって何をしているのか、
何の撮影しているのか、という、
降りかかる質問攻撃にもそこそこ対処し、
さらには、人々の邪魔にならないよう、
最大限に気をつかい続けなければなりません。

皆さま、もし、お出かけ先の公園などで、
地面に腹ばいで写真撮影している人間を見かけたら、
おそらくほとんどの場合は人畜無害なはずですので、
撮影をしている間だけでも、
そっとしておいていただけると幸いでございます。

※このコンテンツでは、 きのこの食毒に触れてますが、 実際に食べられるかどうかを判断する場合には、 必ず専門家にご相談ください。
 
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