ウスキモミウラモドキ
食不適
写真と文章/新井文彦

は?
うすきもみうらもどき?
うす、きも、みうら、もどき?
うすきも、みうらも、ドキッ♥?
いったい、どんなきのこなんでしょう?

仕事でもプライベートでも、この20年来、
パソコンは、Macintoshオンリーなのですが、
今愛用している、MacBook Proで、
(日本語入力システムは、Google日本語入力)
「うすきもみうらもどき」を漢字変換してみると、
「臼杵も三浦もどき」。
なるほど、地名で攻めてきましたか……(笑)。

もったいぶらずに、漢字表記を発表します。
愛用の図鑑『北海道のキノコ』によれば、
「淡黄擬紅絹裏」と書きます、はい。
(別の表記も見かけますが……)

淡い黄色で裏が紅絹(もみ)のきのこに似ているきのこ。
とにかく、実物をじっくり観察してみましょう。

ウスキモミウラモドキは、夏から秋にかけて、
針葉樹、広葉樹を問わず、林床に発生。
傘の直径は、2〜7cmくらい、
高さは、5〜15cmくらいの中型きのこです。

傘の色は、もちろん、淡い黄色。
はたまた、淡い蜜色。
傘は最初、円錐形で、だんだん開きますが、
真ん中のとんがりは開き切っても残ったまま。
全体的に繊維質な感じの模様があります。

傘の裏側のヒダの間隔は、やや密。
イッポンシメジの仲間なので、
胞子が熟してくるとともにその色を反映して、
白っぽい色から肉色へと変化します。
つまり、これが「紅絹裏」ってことですな。
「赤裏」とかではなく「紅絹裏」ってとこが、
命名者の文学的センスを感じます。

そして、特徴的なのが、柄。
色は傘と同系統でさらに淡くした感じですが、
なんと、キリキリキリっと、ねじれているんです!
実に贔屓目な感想ではありますが、
全宇宙を支配している重力に抗って空へ向かわんとする、
生命の力強さを感じずにはいられません(笑)。

あと、根本に白い菌糸が見えていることもあります。

食べるには向きません。
おいしくないみたいです。
ウスキモミウラモドキが属する、
イッポンシメジの一派には毒きのこが多く、
似ていて同定が困難な場合も多くあるので、
じっくり鑑賞するに留めましょう。

ちなみに、「紅絹(もみ)」とは、
真っ赤に染めた薄地の平絹のことです。
そして、通常「もみうら」と言うと、
その紅絹を、衣服の裏地に用いることであり、
漢字で書くと「絹」が抜けて「紅裏」になるんですよね。
ちょっと、ややこしいですけど。

じゃあ、きのこの名前も、
「淡黄擬紅裏」にすればいいじゃん!
と思う方もいるかもしれませんね。
でも、それだときっと、
ウスキウラベニモドキって読まれてしまい、
発音的にも、また、視覚的にも、
「紅絹(もみ)」が醸す文学的雰囲気が、
イマイチ発揮できないのではないか、
と、文学的素養にいささか欠ける、
きのこ写真家は愚考するわけでございます。

※このコンテンツでは、 きのこの食毒に触れてますが、 実際に食べられるかどうかを判断する場合には、 必ず専門家にご相談ください。
 
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