正解、食べられます!
ウスヒラタケ
食
写真と文章/新井文彦

生物が「動物」と「植物」、
2つのみに分類されていたその昔、
花が咲かない植物は「隠花(いんか)植物」と呼ばれ、
花を咲かせる「顕花(けんか)植物」よりも、
下等だとみなされていました。

隠花植物……。
現在では、生物学的に、ほとんど使われていませんが、
その、美しく、悲しく、はかない響き……。

ぼくは、きのこはもちろん、
粘菌(変形菌)、地衣類、コケなどに、
生物的にも、被写体としても、興味を持っていますが、
それらをひと括りに表現する「隠花植物」という言葉は、
重宝していると同時に、大好きです。

それはさておき、ここのところ、
実物、グッズを問わず、きのこやコケに興味を持ち、
「きのこ女子」「コケ女子」などと呼ばれたり、
もしくは、自称する方々が増えつつあり、
観察会やイベントが各地で多々開催されてるようです。

通常の自然散策ツアーは、風光明媚な場所を、
可能ならば多めに見て回ろうとするわけですが、
きのこ女子たちの興味は、もっぱらきのこなので、
上、下、左、右、慎重にきのこを探しながら歩きます。
100m進むのに15分かかるなんて、ザラです。

これが、コケ女子になると、さらに歩みが遅く(笑)、
各自持参のルーペでじっくりコケを観察したりするので、
100m進むのに、2時間かかったりとか!
皆さん、本気なんですねえ。

何はともあれ、我々、隠花植物好きとしては、
日々の「胞子活動」が実を結んでいるわけで、
この現状は、嬉しい限りです、はい。

さて。
阿寒湖を見下ろす雄阿寒岳の麓の一角に、
ぼくが「コケコケの森」と呼んでいる場所があります。
トドマツの原生林なのですが、その一部だけ、
林床がびっしりとコケに覆われているんです。

もちろん、きのこや粘菌や地衣類やシダも多数。
隠花植物の楽園!これぞまさに、隠花帝国です(笑)。

珍しく、広葉樹のカンバ系の倒木を見つけたら、
そこに、ウスヒラタケが生えていました。

ウスヒラタケは、初夏から晩秋にかけて、
広葉樹の枯木や倒木から、多くの場合、
重なりあうように、たくさん発生します。

白〜淡い黄色の傘は、
直径が2〜8cmくらい、厚さは1〜3mm。
柄は短い、というか、ほとんど無い場合も。
まさに、薄いヒラタケですね。

ヒラタケによく似ているのですが、より小さいこと、
傘の色が白っぽいこと(ヒラタケは灰色〜褐色)などで、
区別することができます。

お味は、一級品。
クセがなく、香り高く、歯ごたえもよし。
和食、洋食、何でもござい、です。

ぼくは、きのこが好きなので、
きのこを見つけるとやはりテンションが上がります。
でも、コケも、シダの仲間も、地衣類も、
単に「緑色」と言ってしまいがちですけど、
本当にさまざまな色の緑があるんですよ。
コケコケの森へは、いつ訪れても、感動しきりです。

隠花帝国万歳!

※このコンテンツでは、 きのこの食毒に触れてますが、 実際に食べられるかどうかを判断する場合には、 必ず専門家にご相談ください。
 
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