ウマノケタケ
食不適
写真と文章/新井文彦

ぼくは、撮影で森へ入るときには、
たとえ真夏でも、上下レインウエアを着込みます。
(ただし、前年着ていたものの使い古し)

その目的は、主に、防虫。
だって、北海道のヤブカは、
防虫剤なんかほとんど効かないし、
デニムの上からでも平気で刺してくるんだもん!

ゴアテックスのレインウエアが、
他素材のものに比べて優れているのは、
その薄さとややマシであろう通気性、
(宣伝に謳うような劇的な通気効果は未体験!)
それから、動きやすさですね。

防水性能は、ホームセンターで売っているような、
ゴムのような素材の厚い雨合羽と変わりませんが、
快適さはやはり値段相応です。

靴は、トレッキングシューズか長靴。
肌が弱いうえに虫を呼び寄せる体質なので(涙)、
吸血昆虫がたくさんいそうな場合は、
さらに、頭からすっぽり防虫ネットを被ります。

さて、いざ、森へ。
ゆっくり歩きながら、周囲を見回しましょう。
目ぼしいきのこが目にはいらない、という場合は、
とりあえず、立ち止まってみましょう。
木の根の脇とか、草陰などに生えているきのこが、
目に入るかもしれません。

立ち止まってもダメなら、座ってみましょう。
視線がぐっと低くなるので、
立っていたときには気づかなかったきのこが、
ふと見つかるかもしれません。

それでもダメなら、四つん這いに!
虫などに寄生する冬虫夏草を愛好する方々も、
両肘両膝を地面につけてなめるように探すのが基本、
とおっしゃっております。
落葉や落枝などに注意して地面をじっくり眺めれば、
そこに生える小さなきのこを発見できるかも。

ね、ほら、こういうとき、
雨が降らずとも、衣服の汚れ防止に、
レインウエアが威力を発揮するわけですよ。

雄阿寒岳山麓にあるトドマツの森で、
四つん這いになってみたら、極小きのこ発見。
その名も、ウマノケタケです。
うん、細い、細い。
馬の毛? さもあらん。

ウマノケタケは、夏から秋にかけて、
主に広葉樹系の葉っぱや細枝から発生します。
通常、子実体は、数個ずつの束になって散生。
硬質な傘は、最初白っぽく、徐々に黄褐色になります。

ハナオチバタケハリガネオチバタケに似ていますが、
黒い柄がまるで毛髪のように細くて、
ヒダの数が少ないというか、間隔がまばらだったら、
ウマノケタケと考えてほぼ間違いなしでしょう。
傘の直径は、0.6〜0.7cmくらいです。

これだけ小さいと、
食べる食べないの問題じゃありませんね。
よって、食不適。

それにしても、ウマノケタケは、
小さいけど本当に精緻な造形のきのこですよね。
探すのはちょっと大変ですけど、
見つけた時の喜びは本当に大きいです、はい。

え? もし、四つん這いになっても、
きのこが見つからなかったらどうするのかって?

また立ち上がって歩き出せばいいべさ。

※このコンテンツでは、 きのこの食毒に触れてますが、 実際に食べられるかどうかを判断する場合には、 必ず専門家にご相談ください。
 
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