生木、枯木、倒木、枯葉、地面などから、
昆虫、はたまた、きのこそのものまで、
きのこが発生する場所は多岐にわたります。
ぼくは、もう何年もの間、6月から10月くらいに、
阿寒の森のきのこをこれでもかと撮影しているので、
いつ、どの森へ行けば、どんなきのこが見られるか、
おおよそのところは把握しているつもりです。
もちろん、気象条件は毎年違いますし、
良い、悪い、関係なしに、
森の環境は絶えず変化しているので、
100%確実だと言える話ではありませんが。
(初めて出会うきのこもけっこうあります)
木々の根っこと地中でつながって、
栄養をやりとりする菌根菌の場合は、
共生している木が元気であれば、
比較的長い間にわたって発生が確認できそう、
ということは、想像に難くありません。
きのこ写真を撮り始めた2007年頃から、
現在に至るまで、夏の盛り、7月下旬になると、
阿寒川源流部の小さな木製の橋のほとりで、
必ず姿を見せてくれるきのこが、この、ウスタケ。
各種針葉樹の菌根菌でございます。
ここは、トドマツやミズナラが生える針広混交林で、
阿寒川へと注ぐ支流に沿った傾斜地。
ここのウスタケの多くは上の平らな場所に生えるので、
川を背景にして上側から撮影する場合が多いのですが、
この個体は、傾斜の途中から発生。
ピン、とひらめきました。
カメラを三脚から外して川へ下り、
下からウスタケ仰ぎ見たら、予想通り。
地面に両肘をつけてカメラを安定させ、
カメラのファインダーをのぞいたとき、
まったく別の森の姿が見えたような気がしました。
そう、きのこの目線で森が見えたんです!
さてさて。
ぼくに森を見る新しい視点を授けてくれたウスタケは、
夏から秋にかけて、モミの仲間の針葉樹、
北海道では主にトドマツの樹下に発生します。
円柱のような幼菌から、成長するにつれ、
中央部分が深くくぼんでラッパ型に。
ラッパの内側は鮮やかな朱色〜黄色で、
外側はやや黄色〜灰色味を帯び、
深く脈状になったひだ(偽ヒダ)が下へ伸びています。
独特な形をしていますが、正真正銘の毒きのこ。
ゆでこぼすと毒が抜けて食べられる、
との説もありましたが、それは、昔の話。
食べると、嘔吐や下痢など、
胃腸系の中毒症状が現われます。
どういう理由かさっぱりわかりませんが、
毒きのこを食べたことを自慢をする人がいますが、
市井に生きる普通人の常識として、
毒だとわかっているきのこを食すのはやめましょう。
それにしても、きのこ目線で見る森の姿、
なんかすごく新鮮じゃありません?
あなたにもこの感動、伝わるといいなあ……。
そうか、たまには、森で、寝転がればいいのか!
(防虫対策だけはゆめゆめ忘れるべからず) |