食毒不明。疑わしきは食せず。
ハナホウキタケ
毒
写真と文章/新井文彦

ぼくは、基本的に、
記憶力にはあまり自信がないのですが、
自分が撮影したきのこ写真に関しては、
いつどこで撮影したのかそこそこ覚えています。

本来なら、デジタルの利を最大限に生かして、
写真データにさまざまな情報をタグ付けして管理し、
キーワードなどで検索すれば、
立ちどころにお目当ての写真を探し出せる!
はずなのですが、生来の無精が……(涙)。

ここ1〜2年の写真はそこそこ整理しているものの、
それ以前のものは、もう、ほぼお手上げで、
必要な写真を選び出すには記憶力だけが頼り。
とほほ。

三歩歩けば忘れてしまう鶏脳にもかかわらず、
おぼろげながらもなぜ写真撮影時の記憶があるのか、
ちょっとだけ自問自答してみると、
まず、きのこの写真を撮影する前に、
周りの風景や環境をじっくり眺め回しているんです。
写真を撮影することよりも、
その場でその風景を見るのが楽しいんですよね。

さらに、カメラを三脚にセットしたあとでも、
周囲の環境ときのこのバランスなどを考え、
実際の風景を見つつ、ファインダーものぞきつつ、
絞りを変えたり、フラッシュを使ったりして、
構図を仕上げていく、というわけ。
そんなに見ていたら、記憶にも残るわ(笑)。

で、こんなことを書いているうちに、
このハナホウキタケを撮影したときのことも、
だんだん脳裏に蘇ってくると……。

夏の盛り、8月下旬のこと。
雨が多くて天気的には恵まれない年でしたが、
雨上がりの晴れ間に阿寒川へ出かけたのでした。

釣り人の踏跡がついている滑りやすい土の斜面。
20mくらい先、河原に降りる途中にある、
高温の温泉が大量に吹き出している湯坪で、
温泉卵をつくると絶品なんだよなあ、
なんて考えながら歩いていたら、足元に、
真っ赤なホウキタケタイプのきのこを発見!
よく見ると、縦横10cm前後の株が、
あちこちに分散しています。

実は、このきのこを見たのは、これが初めて。
帰ってから図鑑で調べたらハナホウキタケでした。

夏から秋にかけて、
主に広葉樹林の地上で見られるとのことで、
川沿いのこの場所は、発生条件にぴったり。
鮮やかさを欠きつつも赤い色が印象的で、
肉の色はやや白め、先端は黄色みを帯びています。
そして、肉の傷ついた部分が赤褐色に変色。
図鑑に記してあった特徴と合致しています。

そして、これは、毒きのこ。
同じ仲間のホウキタケは、シメジをも凌ぐほどの、
絶品食用きのこですが、こちらは、
毒成分は不明ながら、下痢、腹痛、嘔吐など、
胃腸系の軽めの中毒を引き起こすのだとか。

きのこらしからぬ変な形をしていて、
おまけに色もド派手ときたら、
本能的に食べたらヤバイ、と思いますよね。
はい、くれぐれもお召あがりになりませんように。

自分が撮影したきのこ写真に関しては、
いつどこで撮影したのかそこそこ覚えています!
などと、偉そうに書きましたが、
もしやと思って写真データを確認したら、
このきのこを撮影したのは8月上旬のことでした。
お恥ずかしゅうございます……。

※このコンテンツでは、 きのこの食毒に触れてますが、 実際に食べられるかどうかを判断する場合には、 必ず専門家にご相談ください。
 
感想をおくる とじる ツイートする