昼なお鬱蒼とした阿寒の森。
主役はアカエゾマツやトドマツなど針葉樹です。
ぼくは、長年、関東地方で暮らしていたので、
針葉樹というと真っ先にスギとかヒノキを思い出します。
樹林そのものは、美しく、整然としているものの、
生物の多様性という意味では、
あまり魅力を感じることはありませんでした。
スギやヒノキの人工林は、いわば「木の畑」ですから、
他の生物が多様過ぎても効率的に木を生産するという、
本来の目的を果たせないわけで。
その昔、阿寒の森を初めて訪れたとき、
針葉樹林なのに、動物も、植物も、きのこも、たくさん!
と、すごく感動したのですが、
よくよく考えてみれば、同じ針葉樹林と言っても、
場所は北海道だし、樹種はマツ系だし、
それよりも正真正銘の天然林だし、
そりゃあ、何もかも違うわけです。
かつて、北海道大学の調査チームが、
阿寒国立公園のきのこを調査したとき、
森林別に最も多くの種類が確認されたのも、
針葉樹のトドマツの森なんです(次点はミズナラの森)。
阿寒の天然針葉樹林、
歩きたくなってきたでしょう(笑)?
さて。
6月初旬のことです。
心が洗われるような眩しい新緑に包まれる森。
あちらの倒木、こちらの倒木をチェックしていると、
はい、きのこ、発見。
黒くて、平べったい形をしている、
ニセクロチャワンタケです。
ん?ニセ……?
はい、きのこの名前には、
モドキとか、ニセとかけっこう使われてますが、
本家本元のクロチャワンタケももちろん存在します。
クロチャワンタケの直径が3mm〜15mmに対して、
ニセクロチャワンタケは12mm〜50mmくらい。
「偽物」の方が、大きいんですね。
また、クロチャワンタケは、主に地面から、
ニセクロチャワンタケは倒木や落枝から発生します。
そして、ニセクロチャワンタケには、
なんと柄が付いている!
これ、大きな同定ポイントじゃん!と思うと、
個体によっては柄が無いものもあるとか(笑)。
ちなみに、
この写真の個体には柄はありませんでした。
でも、大きいし、倒木から発生しているので、
ニセクロチャワンタケと判断した次第です。
まあ、本気の本気で見分けるには、
顕微鏡での胞子の観察が必要らしいのですが、
そこは、まあ、ご愛嬌……。
食毒は不明です。
薄っぺらいし、かさかさだし、
たくさん採れるわけでもないし、
観察するにとどめましょう。
何でも、最近の遺伝子解析によれば、
このニセクロチャワンタケは、
遺伝子がなんたらかんたらなので、
ほにゃららするとああなるかも、ということで(笑)、
将来、臨床用抗生物質としての応用が期待できるとか。
わたくし、一度、その説明文を読んだのですが、
さっぱり理解できませんでした……(涙)。
興味がある方は、ぜひ、おググりあそばせ。 |