ニオイコベニタケ
食不適
写真と文章/新井文彦

ずっとずっと昔、
田舎の小学生だった時のこと。

勉強はまったくできず、
「くそガキ」という言葉が、
逆に褒め言葉になるくらいの超ヤンチャ坊主。
スカートめくりをしたり、
プールにハリガネムシを投げ込んだりと、
先生に怒られない日はありませんでした。
(当時の先生方、ごめんなさい)

ぼくは、悪い意味で、けっこう目立った存在で、
まあ、自分でも多少そのことを意識してました。
女子の目よりも男子の目を気にする年頃なので、
とにかく、くだらないことでもいいから、
「すげえ」と言われたいわけです(笑)。

その「すげえ!」の最高峰は何か?
ええと、クワガタムシだったんです。
里山の一角に畑をもっているような農家の子が、
6月に入ったくらいの頃から、
捕まえたクワガタムシを持って学校へ来るわけです。

もう、大人気なんですよね。
男子の話題と関心は、すべてクワガタムシ(笑)。

里山に捨ててあるシイタケのホダ木の下を掘ると、
カブトムシはけっこうたくさんいたものの、
ミヤマクワガタ、ノコギリクワガタの方が、
圧倒的に人気がありました。

ふん、カブトムシの方がカッコイイもん!
と捕まえたカブトムシを育てていると、
夏休みに入り、気が付くとまた学校が始まっていて、
虫のことは次の夏まで忘れられているのでした。
大きなクワガタムシ、羨ましかったなあ……。

ちょっぴり感傷的になりつつありますが、
ここからいきなり、きのこの話に突入します!
今回ご紹介するきのこは、何と何と、
カブトムシの匂いがするんです(笑)!
その名は、ニオイコベニタケ。

ニオイコベニタケは夏から秋にかけて、
針葉樹林、針広混交林の地上で見られます。

傘の直径は2〜5cmくらい。
表面は薄紅色で繊毛が生えていてやや粉っぽい感じ。
色素が水溶性なのかどうかはわかりませんが、
雨の後に見ると紅色が薄まってしまうことが多いです。

ヒダは、クリーム色で、やや密。
傘とほぼ同色の柄の高さは2〜4cmくらいです。

赤い色をしたベニタケ系のきのこは、
見分けるのがなかなか大変なのですが、
ニオイコベニタケは、
ヒダがクリーム色、柄が傘と同じく赤っぽい、
傘の表面に繊毛が生えている、
そしてそして、カブトムシの匂いがする!
ということで、
他のベニタケの仲間と区別することができます。

ご存知の方もいるかと思いますが、
カブトムシのおしっこ、実は、すごく臭いんです。
手についたら、洗っても落ちないくらい。
ニオイコベニタケはそれほど強烈な匂いはしませんが、
でも、確かに、カブトムシを彷彿させます、はい。
手にとって匂いを嗅ぐと指に匂いが移ることも。

と、いうこともあってか、食不適。
確かに、カブトムシ臭いきのこ、毒がなくても、
あんまり食べたくはないですよね。

そういえば、自分でクワガタムシが取れなくて、
親にデパートで買ってもらった友人は、
みんなにダメ出しされていたっけなあ。
子どもには子どもの社会ルールがあるんですよね。

※このコンテンツでは、 きのこの食毒に触れてますが、 実際に食べられるかどうかを判断する場合には、 必ず専門家にご相談ください。
 
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