カンムリタケ
食不適
写真と文章/新井文彦

今回ご紹介するきのこですが、
写真をじっくり見ていただくまでもなく、
そう、水中から発生しています!
ピントは合っていませんが、写真の奥にも、
黄色いきのこがたくさん見えてますよね。

このきのこの名は、カンムリタケ。
湿地帯や水際、時に水没した朽木などから発生します。
それほど珍しいきのこではありませんが、
どんな水際でも見られるというわけではなく、
発生条件はそこそこ限られているかもしれません。

そう言えば、
アメリカはオレゴン州南部のローグ川で、
2005年に発見され、2010年に新種登録された、
ナヨタケの仲間のきのこは、
水中に生え、水中で育つんですね、これが。

そもそも、きのこというものは、
目には見えないけど、世界のありとあらゆる場所で、
胞子が飛び、菌糸が伸びているわけです。
何てったって、カビの仲間というか、
カビそのものなんですから。

そして、その勢力は、水中まで!
きのこ、すごいなあ。

菌類は光合成をする必要がないので、
もしかしたら、太陽の光が届かない、
海の底でも繁殖してたりして……。

それはそうと、カンムリタケの話に戻します。
阿寒では、森の雪解けが進んだ、
5月から6月くらいにかけて発生します。
春のきのこと言ってもいいかな。

白い柄は高さが1.5〜6cmくらいで、
その上に、まん丸〜楕円形っぽい、
多少ぷるぷるしている鮮やかな黄色い頭部が。

特筆すべきは、その日持ちの良さ!
近くでじっくり見れば劣化がわかるものの、
ひと月くらいは鮮やかな黄色を保っています。
とはいえ、食べるには、適しません。
口にしたら沼地の泥の味がしそうです(笑)。

群生しているし、発生期間は長いし、
写真に撮りやすそう、と思うでしょ?
ところが、これが、大変なのよ。

長靴で一歩踏み出すと抜けなくなるくらい、
どろどろのぬかるみなんです、この場所。
おまけに、水芭蕉の群落地なので、
あんまり中に入って根っこ?を踏んでも悪いし。

三脚を立てることができないから、
ここぞという場所を決めてしゃがみ込み、
おしりが濡れないように気をつけながら、
カメラの下を支えている左手が濡れるくらい、
水面ギリギリまでカメラを近づけて、パシャパシャ。

いつしか撮影に夢中……。

そして、ふと気が付くと、
ストラップや、リモートコントロールが水没し、
レンズも、カメラも、半分水没。
お尻もびしょ濡れ。
ひいいい……。

ほんと、大変なんです……(涙)。

ちなみに、
写真下のカンムリタケが生えているのは、
アカエゾマツの松ぼっくりです。
落葉や枝だけではなく実からも生えるんですね。
さすが森の分解屋さん、仕事に抜かりはありません。

※このコンテンツでは、 きのこの食毒に触れてますが、 実際に食べられるかどうかを判断する場合には、 必ず専門家にご相談ください。
 
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