おしい!食べられるんです!
キクラゲ
食
写真と文章/新井文彦

学生時代に過ごした界隈を久しぶりに訪ねたら、
あの頃食べた安いラーメンの味を思い出して、
記憶を頼りに店を探してみました。
ちょっと迷ったけど、発見!
感無量。

紺地に赤で中華そばと書かれたのれんをくぐると、
六角形を半分にしたような赤いカウンター。
20年ぶり?30年ぶり?昔の記憶が一気に蘇ります。
昼時をかなり過ぎていたので他に客はなし。
見覚えがあるオヤジはカウンターのはじっこで、
頬杖をつきながらお茶を飲んでました。

壁に貼られたメニューを見て、
ふと、ラーメンではなくタンメンを注文。
ぼくの人生の長い間にわたって、
タンメンという文字は無かったのですが、
ある漫画を読んだことがきっかけで、
タンメンの魅力にはまってしまって……。

オヤジは、面倒くさそうにカウンターの中に入り、
大きなフライパンをコンロにかけます。
肉らしきものをじゃじゃじゃと炒めて、
一度お皿に取ったあと、再び油をすくって、
モヤシやキャベツなど大量の野菜を投入。
しゃっしゃっしゃ、とんとんとん、と、
大きめのおたまがリズムを奏でます。
何て食欲を誘う音!

麺を茹で始めると同時に、
野菜たっぷりのフライパンにスープを入れ、
あとは、待つのみ、待つのみ……。
おまちどう、と目の前に置かれたタンメン。
ああ、タンメン。

その丼の中で、ひときわ自己主張をしているのが、
そう、たっぷり入ったキクラゲでした……(笑)。

キクラゲは、春から秋にかけて、
広葉樹の枯木や倒木から発生します。
ゼラチン質でぷるぷる、耳たぶのような形で、
直径6cm高さ3cmくらいにまで成長。
隣同士でくっついちゃってることも多々あります。

キクラゲという名前がつけられたのは、
こりこりとした食感や味がまるでクラゲみたいだから。
漢字表記の「木耳」は中国語が由来みたいです。
(英語は、Jew’s ear、=ユダヤ人の耳)

ミネラルや食物繊維を豊富に含んでいる、
中華料理では欠かせない、有名な食菌ですよね。
食べたことがない人の方が少ないかもしれません。
人工栽培も盛んに行われていて、生はもちろん、
乾燥させたものも広く流通しています。
食用にしている国は少ないかもしれませんが、
世界中で発生しているきのこだそうです。

ちなみに、この写真を撮影したのは群馬県。
そう言われてみると背景がなんとなく人工林っぽい?
それにしても、古い中華料理屋さんには、
タンメンが似合いますな(笑)。

※このコンテンツでは、 きのこの食毒に触れてますが、 実際に食べられるかどうかを判断する場合には、 必ず専門家にご相談ください。
 
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