おしい!食べられるんです!
ホテイナラタケ
食
写真と文章/新井文彦

物心がついた時にはもう、何となく、
雨はいやだなあ、と思っていたような気がしますが、
きのこ写真を撮るために阿寒の森へ通うようになって、
一転、雨が好きになりました。

しばらくお天気が続いた後の雨なら、なおさら。
葉っぱに落ちた雨粒が宝石のようにきらきら輝き、
ざわざわ、ぱらぱらと、色々な音が聞こえて、
いつもとちょっと違う爽やかな香りが……。
木も、草花も、きのこも、生き生き。
都会で暮らしていると忘れがちですけど、
生物は、雨なしには生きていけないんですよねえ。

まあ、そんなことを言えるのも、森では常に、
上下ともゴアテックスのレインウエアを着こみ、
長靴をはいている「完全防備」だからかなあ(笑)。
突然にわか雨が降ってもへっちゃら。
(でも、汗びっしょりだったりして……)

この写真を撮影したのは、夏の終わりの昼下がり。
雨が降りつつも薄日が射し、森が輝いてました。
立木の幹からにょきにょき生えているのは、
ボリボリこと、ホテイナラタケです。

ナラタケ、と名がつくきのこは、正式には、
オニナラタケとかヤワナラタケとか数種類ありますが、
北海道の道東地方では、多少の違いには目をつぶって、
全部一緒くたに「ボリボリ」と呼んでいます!
(実は、けっこう外観が違うのですが……)
とにかく、ボリボリは、ボリボリなのだ(笑)。

ボリボリの多くは、通常、
枯木、倒木、立木の根本から発生するので、
生きた木の幹から発生しているボリボリは、
おそらく、ホテイナラタケだと思われます。

傘の直径は、2cm〜10cmくらい。
真ん中辺りに、色の濃いささくれがあります。
傘裏のヒダは密で、成長とともに白から褐色に。
高さは5cm〜7cmほどで、根本をよく見てみると、
球根のようにぷくりと膨らんでいます。

お味は、抜群。
すごくいい出汁も出ます。
東北地方でも人気が高い、食用きのこの代表格です。
(「ボリ」「モダシ」などと呼ばれています)
とはいえ、生食、そして、食べ過ぎは禁物。
お腹をこわしちゃうの要注意。

ちなみに、阿寒の森は、
針葉樹が生い茂る原生林なので、
けっこう強い雨が降っても、
重なりあう葉っぱが屋根代わりになって、
思ったほど濡れないで済みます。

夏で、着替えがあるなら、
濡れて歩いた方が気持ちいいくらいです、はい。
雨も、また、よし。

※このコンテンツでは、 きのこの食毒に触れてますが、 実際に食べられるかどうかを判断する場合には、 必ず専門家にご相談ください。
 
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