不正解、食べられます!
トキイロヒラタケ
食
写真と文章/新井文彦

自然の世界では、
動物も、昆虫も、植物も、菌類も、
それぞれが自分勝手に生きているようですけど、
生態系という大きなカタマリで考えてみると、
きちっと整合性がとれているというか、
すべてが関わりながら調和しているんですよね。
個々が全体、全体が個々、とでも言うか。

「自然」の反対語は「人工」。
人工物をつくり出す人間という生物は、
「自然」に含まれている、と考えると、
自然とは何ぞや、人間とは何ぞや、人工とは何ぞや、
などという問題は、なかなかテツガク的で、
答えを探ろうとしても、一筋縄ではいきません。

自然界で生きている人間以外の生物は、もちろん、
自分たちのことや、自分たちが生きている環境を、
「自然」だなんて思っているはずもなく、
つまり、自然とか人間とか人工とかいう概念は、
人間がいろいろな物をつくっていくにつれ、
人間の頭の中に生まれたものなんでしょうねえ。
だからこそ、自然には真摯でありたいものです。

いつもは、それぞれが暮らしている街で、
人間がつくったもの=人工物に囲まれているから、
ついつい自然の重要性を忘れてしまいがちですが、
自然が無くなれば人間も生きてはいけないわけで、
人と自然との関わりを再認識するためにも、
たまには人工物が一切目にはいらない、
大自然の中に身を置くことをオススメします。
(阿寒湖周辺の森なんか、最高です!)
いろいろアタマの中で考えてわからなければ、
実際にそのものを見るのがいちばん……。

そんなこんなを考えながら、ぼ〜っと歩いていると、
上品な桃色のきのこ、トキイロヒラタケを発見。
阿寒湖周辺では、夏の初めの、6月〜7月くらいに、
広葉樹の枯木や倒木から発生します。

傘は、半円形、扇形で、経は2〜15cmくらい。
新鮮な状態では、桃色〜鮭肉色、つまり、
その名の通り、朱鷺色をしているというわけで。
淡い感じの色がまた控えめでとても素敵ですよね。

ヒダも傘とほぼ同じ色。
柄が、あるような、無いような、あるような(笑)。
どこまで傘でどこから柄なのか不明瞭です。

そして、若いうちなら、食べられます。
(人工栽培も行われています)
香りが良く、ダシもよく出るとのこと。
加熱しても色があまり落ちないので、
美しい彩りを生かす料理にするといいかもしれません。
とはいえ、ぼくは、食べたことがないのですが……。

美しい朱鷺色と言えば、
ぼくは、幼少の頃、親の仕事の都合で、
新潟県の佐渡島に住んでいたことがあり、
当時、わずか7羽にまで減ってしまった天然の朱鷺を、
実際に間近で見たことがあるんです。
記憶の中で美化されている部分もあるかと思いますが、
とてもきれいだったなあ……。

自然と人間の関係はいろいろ難しい問題もありますが、
朱鷺のような悲劇が二度と繰り返さることのないよう、
願うばかりです。

※このコンテンツでは、 きのこの食毒に触れてますが、 実際に食べられるかどうかを判断する場合には、 必ず専門家にご相談ください。
 
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