これは、食毒不明なんです。
ヘビキノコモドキ
毒
写真と文章/新井文彦

毒きのこ、というと、存在そのものに、
顔をしかめる人が少なくありません。

ですが、ぼくは、
毒を持っていようが、持っていまいが、
そんなことはまったく関係なしに、
生物としてのきのこにすごく興味があります。

きのこに貴賎なし!(笑)。

しかし、ひと口に、毒きのこと言っても、
これがなかなかクセモノで掴みづらいんです。

日本で見られるきのこは、一説によると、
1万種を超えると言われていますが、現在、
正式に名前が付いているものは、3000種強とか。
毒きのこどころか、きのこそのものですら、
まだまだ知られていないことばかりなんです。

「毒きのこは何のために毒を持っているの?」
と、いろいろな人によく聞かれるんですけど、
答えは、まったく、わかりません!
知り合いの菌学研究者・白水貴博士に聞いても、
本人はもとより、それを正確に説明できる菌学研究者は、
おそらく皆無だろう、とのこと。

そりゃあそうですよね。
きのこに意思があって毒を持ったわけじゃなく、
地球生物誕生以来数十億年にわたる進化の結果、
たまたま、自ら有している成分が、
ニンゲンにとって毒だったというただそれだけのこと。

他の生物から身を守るために毒を持った、など、
一見、信ぴょう性がありそうな理由も、
摂取から数時間経過後に発症する遅効性の毒の場合、
とても身を守る術にはなりませんよね。

ニンゲンを懲らしめるために毒を持った!
という説で、毒きのこのファンタジー小説を書いたら、
きのこファンに受けるかもしれません……(笑)。

さて。
ヘビキノコモドキは、夏の盛りに、
主に広葉樹の林地から発生します。
大きなものでは傘の直径が15cmくらいに。
傘の表面は灰褐色〜暗灰色で、
やや黒っぽい圧着したイボが多数あります。

柄は灰色〜灰褐色で繊維状の小鱗片に覆われ、
硬質の白っぽいツバを持っています。
基部は球根のようにふくらみ、
表面には黒褐色のツバの破片が環状に並びます。

毒成分が確認されているものの症状は定かではなく、
コレラに似た症状(嘔吐、腹痛、下痢)が出るとか。
いずれにせよ、テングタケ系のきのこは、
余程同定に自信がない限り、食べない方が無難です。

ヘビキノコモドキという名前は、
キリンタケというきのこが別名ヘビキノコと呼ばれ、
(ヘビの鱗のような模様に見えるので)
それに似ているので、モドキ、が加えられたようです。

ちなみに、写真後方に写っている白いきのこは、
あの、泣く子も黙る猛毒きのこ・ドクツルタケです!

形態的にヘビキノコモドキに似ているきのこが、
確認されているそうで(名前はまだなし)、
この写真のきのこについても、傘のイボの色が、
やや薄すぎるなあ、と思えるので、
もしかしたら、近縁種の可能性もあります。
あしからず。

※このコンテンツでは、 きのこの食毒に触れてますが、 実際に食べられるかどうかを判断する場合には、 必ず専門家にご相談ください。
 
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