ウコンハツ
食不適
写真と文章/新井文彦

世界、というと、
目の前に広がる唯一無二のもの、
と、別に疑問もなく思ったりしてますが、
実は、自分の脳みそが勝手につくり出した、
幻影のようなものかもしれません。

あるいは、世界が実際に存在するとしても、
人が認識する世界とは、脳みそが、五感を駆使して、
外界世界を脳みその中で再構成したもので、
人の数だけ違った世界がある可能性もあります。

何をわけのわからんことを……。

いや、柴犬と散歩をしていると、
いろいろなことを考えさせられるわけです。

ニンゲンは主に目から世界を知りますが、
柴犬が世界を知る手段は、そう、鼻。
散歩中も、じっくり見る、というよりは、
絶えず、くんくん、と臭いを嗅ぎまくってます。

ニンゲンも、柴犬も、他のさまざまな生物も、
同じ地球の、同じ時代の、同じ場所で生きているけど、
それはまったく違った世界なのかもしれません。

柴犬世界のきのこが垣間見える(嗅げる)かも!
と、おバカなことを考え、森へ出かけたとき、
しばし目を閉じ「くんくん」してみたことがありますが、
当然、ニンゲンの嗅覚ごときで、
きのこなんて見つかるはずがありません……。

しか〜し。
「きのこ目」を駆使すれば、
きのこを見つけるなんてらくらく。
嗅覚を補って余りある視覚……。
と、いうことで、ウコンハツ発見!

ウコンハツは、夏の盛りに、
針葉樹、広葉樹を問わず、森の地上から発生。
傘も柄も本当に鮮やかな黄色です。
(ヒダは真っ白)

傘の直径は3〜9cmくらい。
乾燥したビロードのような手触りです。
高さは、3〜8cmくらい。
柄は、最初しっかりとした中実ですが、
時間が経つとすかすかの中空になるのだとか。

黄色いきのこで、ウコンハツ……。
うっかり別の何物かの名前と間違えないように(笑)。
ウコン、ですから、ウコン。

実は、ウン……、もとい、ウコンハツは、
成熟するにつれどんどん臭くなるんです。
発酵した野菜というか、腐った糠味噌というか、
いずれにしても、非常に不快な臭いです。

毒性はないらしいのですが、
食べる価値はまったくなし。
これだけ美しいきのこですから、
心ゆくまで鑑賞して楽しみましょう!

ちなみに、
阿寒で見られるきのこの中では、
キイロスッポンタケ(悪臭)や、
ニオイハリタケ(芳香)などは、
5m以内にあれば必ずわかるほど強い臭いを発します。
実像を見るより先に香りできのこの発生を感じると、
ちょっと嬉しかったりします。

この世界が、これからも、
ニンゲンにも、柴犬にも、きのこにも、
暮らしやすいようにと祈るばかりです、はい。

※このコンテンツでは、 きのこの食毒に触れてますが、 実際に食べられるかどうかを判断する場合には、 必ず専門家にご相談ください。
 
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