都会で暮らしている人が、初めて阿寒を訪れ、
カヌーで阿寒湖に乗り出すと、決まって、
「何もない!」というような感想を口にします。
周りは、見渡す限り、原生林、原生林、原生林。
木と木と木がたくさん集まって森を形成しているわけで、
その人の言葉通りに何も存在してないのではなく、
人工物が見当たらない、という意味での、
「何もない」ということなんですよね。
確かに、確かに、
十数kmにわたる範囲が視界に入っていながら、
人工物がほぼ見えないというシチュエーションは、
相当な田舎へ行ってもなかなか体験できないはず。
北海道、そして、阿寒、恐るべし、です。
ちなみに、人工物が「ほぼ」見えないと、
奥歯に物が挟まったような表現をするのは、
時折、はるか遠くなんですけど、
遊覧船とかモーターボートが視界に入っちゃうんです。
こればかりは仕方ありません。
そして、次に、「何もない」森へ入って、
目の前にある1本の倒木を凝視すると、またびっくり。
倒れて枯れている木の残骸と思いきや、それが、
コケや地衣類や粘菌や、そして、我らがきのこなど、
無数の小さな命を育んでいるのですから。
豊穣たる倒木……。
そんなこんなで、
びっしりコケに覆われた古い倒木を観察していると、
通常よりもかなり小型のホコリタケを発見。
チビホコリタケ、いや、表面につぶつぶがあるので、
ヒメホコリタケですね。
初夏から秋にかけて、
林地や草地、あるいは、芝生などで発生します。
直径は1〜2cmほどで、球形、あるいは、扁球形。
表面は粉状だったり、とげとげだったりしますが、
やがて剥落してしまいます。
はじめは白く、成長すると黄褐色に変化し、
他のホコリタケの仲間同様、頭頂部に孔が空き、
動物の接触、降雨などの外的刺激によって、
内部で形成された胞子をぶわっと放出します。
多少群生するものの、
あまりに小さいためか、食用とはみなされてません。
なかなか見つかりづらいかもしれませんが、
もし、見つけたら、白い幼菌のうちは、ぷりぷり加減を、
成菌になって頭頂部に穴が開いたら胞子の噴出を、
実際に手で触ってお楽しみください。
きのこの胞子の放出の手伝いができるなんて、
これぞ、まさしく、究極の”胞子”活動(笑)!
失礼いたしました……。 |