これは、食毒不明なんです。
センボンクズタケ
食毒不明
写真と文章/新井文彦

センボンクズタケ、
という名前を最初に知ったとき、
随分ひどい名前を付けられちゃったなあ、
なんて思ったんですよね。

植物の名前でもありますよね、ひどいのが。
学名はわかりませんが、和名で言うなら、
ヘクソカズラとか、ハキダメギクとか、
あと、ママコノシリヌグイとか……(笑)。
(命名の真意はぜひおググり遊ばせ)

植物やきのこに名前をつけるということは、
その個体を最初に発見して学術的に発表した人の、
ある意味、栄誉の証でもあると考えると、
憎しみや恨みつらみでの命名ではないと思います。

センボンクズタケは、夏から秋にかけて、
広葉樹の腐朽木から発生します。
写真を見ていただくとわかりますが、
確かに、地面から直接ではなく、
腐りかけているような倒木から生えています。

名前の「センボン」は、
以前、イヌセンボンタケの回でも触れていますが、
たくさんという意味合いですね。

すっきり伸びた白い柄の上に、整った形の三角錐の傘。
それが束ねられるようにたくさん生えている様子は、
思わず見入っちゃうほど、見応えがあります。

こんなにたくさん生えているのに、
傘の位置、つまり、柄の長さが同じきのこが、
ひとつもありません。
偶然なのかもしれませんが、もしかしたら、
きのこの胞子放出戦略の一環かもしれません。

傘は、保水力があるからなのか、
湿っているときは焦茶色、乾いたときは淡い黄色と、
けっこう大きな色の違いがあります。
傘の直径は、だいたい2〜5cmくらい、
傘と柄を含めた全体的な高さは10〜20cmくらいです。

各種図鑑には食毒不明とあるのですが、
どうやら、毒成分は含まれてないようです。
きのこはとてももろくて、
触るとぼろぼろと壊れてしまいます。
あまり食欲のわかないきのこですね。

たくさんまとまって生えて、
触るとぼろぼろ壊れてクズのようになってしまうから、
(あるいはクズのような腐朽木から生えるから?)
付けられた名前が、センボンクズタケ。
確かに、まあ、見た目と特徴を表していますな……。

ちなみに、今回の写真を見て、
なんとなくいつもと雰囲気が違うなあ、
と、思った方がいらっしゃったら、素晴らしい!
そう、撮影場所は、阿寒ではないんですよね。
白神山地の秋田県側のブナの森です。

鬱蒼とした阿寒の針葉樹林に比べて、
ブナの森はすごく明るい感じがします。

※このコンテンツでは、 きのこの食毒に触れてますが、 実際に食べられるかどうかを判断する場合には、 必ず専門家にご相談ください。
 
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